ハンディなんの職場の力に 発達障害児3人の母ちゃん長男
2020/08/11 14:30
制服姿で表彰状を手にした清瀬真也さん=姫路市内
発達障害の息子3人との日常を写真共有アプリ「インスタグラム」で発信する、“姫路の母ちゃん”こと清瀬幸枝さん(47)=兵庫県姫路市=の長男真也さん(19)が、昨春就職した勤務先でその年の最優秀新人をたたえる「新人努力賞」に選ばれた。ハンディがありながらも、1年で「立派な戦力」と言われるようになった真也さん。インスタには、発達障害児を持つ親たちから祝福の声が相次いでいる。(鈴木久仁子)
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幸枝さんは、真也さんら3人の子育ての日々を、写真を添えてインスタに投稿。パワフルで人情味あふれる雰囲気が特徴で、同じ悩みを持つ人から相談が寄せられるなど支持を集める。
真也さんは小学1年だった7歳の時、広汎性(こうはんせい)発達障害と診断された。こだわりが強く、学習面で理解がしにくかったり、他人の気持ちを把握しにくかったりといった特徴がある。
兵庫県立播磨特別支援学校を卒業した2019年春、複数の飲食業やカラオケ店などを営む株式会社「ペルゴ」(姫路市)に就職した。「いろんなお客さんと触れ合いたい」と、グループ傘下の「餃子の王将」中地店を希望し、配属された。
入社時、真也さんは緊張して口数も少なめだった。筧優輝店長と前田拓也マネージャーは「やっぱりコミュニケーションは苦手なんかなと思った」と言い、あいさつで声を出すよう助言。次第に雰囲気にもなじみ、筧店長は「今はだじゃれも出ます」と笑う。
障害もあり、仕事の手順を覚えたり先輩の指摘を反映させたりするのも時間がかかった。真也さんは「何を教わっても物覚えが悪くてつらかった」と振り返る。それでも家では幸枝さんが、「次に言われないように頑張ればいい。直せば認められる」と励ました。
懸命にメモを取って覚え、やがて中華鍋を振るい、揚げ物やギョーザなどの調理をこなせるように。ホールで注文を聞くなど、接客も担えるようになった。
同社は「今はハンディがあると意識しておらず、立派な戦力」と評価。昨年入社した15人から、今年は2人が対象となった「新人努力賞」のうちの1人に、真也さんを選んだ。筧店長は「仕事は真面目で丁寧。自分のことのようにうれしい」と喜ぶ。
幸枝さんはインスタで、表彰の朗報を伝えるとともに「努力はうらぎらない」という言葉を投稿し、わが子をたたえた。閲覧した人たちからは「元気をもらった」「希望が持てた」などの声が寄せられたという。
真也さんも表彰状を手に「職場の人たちがこんなにも自分のことを見てくれていたのか、と思ってうれしかった」と笑顔を見せ、「やれることが増えてきた。徐々にステップアップしていきたい」と抱負を語った。