3連敗の木村王位 終局後に温泉で打ち明けた思い
2020/08/18 17:45
王位戦第3局終了後、感想戦に臨む藤井聡太棋聖(左)と木村一基王位=8月5日、神戸市北区有馬町、旅館「中の坊瑞苑」(撮影・鈴木雅之)
将棋の八大タイトルの一つ、王位戦の7番勝負(神戸新聞社主催)第3局が、神戸・有馬温泉の旅館「中の坊瑞苑(ずいえん)」で行われた。あの藤井聡太棋聖(18)が、「最年少二冠」まであと1勝に迫った一戦。注目の対局に立ち合うことができた。
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終局後、翌日の朝刊用の原稿を書き終え、露天風呂に入ると、負けた木村一基王位(47)と偶然、一緒になった。普段から気遣いの人として知られる。ねぎらいの言葉をかけると、対局前に内藤國雄九段(80)=兵庫県西宮市=が本紙に寄せた「木村王位には、のびのび指してほしい」という発言をネットで読み、ずいぶん励まされたと明かしてくれた。「来年、またここで会えるようにがんばります」。口調は穏やかだが、王位防衛への思いがにじみ出ていた。思いもよらぬ裸の付き合い。会場が温泉旅館だったからこその貴重な経験だった。
将棋や囲碁のタイトル戦は全国を転戦することが多く、温泉旅館で開かれることは珍しくない。だが今年は新型コロナの影響で事情が異なる。藤井棋聖が初タイトルを獲得した棋聖戦5番勝負の会場は東京と大阪の将棋会館が中心だった。
翌朝、旅館の関係者用フロアで藤井棋聖と2人で話す機会があった。温泉の感想を尋ねると「指し掛け(対局1日目)の夜も入ることができ、リラックスできました」といつもの控えめな笑顔。もしかしたら温泉の効果がほんの少しでも勝利の後押しになったのかもしれない。
今回の対局では副立会人を務めた人気棋士が金泉の足湯を楽しむ様子もネット中継で放映された。今後、日本三古泉で日本三名泉の有馬温泉が、将棋ファンからいっそう注目され、そして例年通り、各地で開かれる大会を何の心配もなく楽しめる日が来ることを願わずにいられない。(井原尚基)
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王位戦7番勝負の第4局は、19、20日に福岡市の「大濠公園能楽堂」で指される。
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