コーヒー自家焙煎がホット、専門店増える西宮 コロナで巣ごもり追い風に

2020/08/19 15:00

多彩な風味のスペシャルティコーヒーが試飲できる「TAOCA COFFEE」の店舗=西宮市湯本町

 高品質のコーヒーを追い求め、自家焙煎(ばいせん)した豆を提供する店が、兵庫県西宮市内で活況を呈している。「家で豆をひき、ゆったり楽しみたい」とのニーズは、コロナ禍の外出自粛や在宅勤務で拡大。「通信販売が好調で、春以降、豆の売上額が前年同期の4~5倍に増えた」という店もある。巣ごもり需要を追い風にして、地域のコーヒー文化をブランド化する企画も始動している。(小林伸哉) 関連ニュース 【写真】大型の焙煎機を貸し出すレンタル事業も ディーシーエスの左野徳夫社長 西宮に根付くコーヒー文化をブランド化 魅力発信へプロジェクト始動 こだわりの焙煎豆をネット販売 京阪神などの5店企画

 西宮市内では2010年代から、自家焙煎の豆を提供する店が増えた。豆を厳選し、気温や湿度などに応じて、焙煎の温度や熱量、時間を細かく調整する。「スペシャルティコーヒー」と呼ばれる最高の一杯となる豆を提供する。
 当時珍しかった「焙煎所」の名を冠し、13年6月に同市櫨塚町で開業したのが「ゆげ焙煎所」だ。持ち味は「ふっくらやさしい味わい」。14年6月には苦楽園エリアで「TAOCA COFFEE」がオープン。地元から望む山並みの緑をイメージした「苦楽園ブレンド」は主力商品に育った。
 両店とも地元で愛され、市内で店舗を拡大した。焙煎や抽出の高い技術が評判となり、販路は全国各地のカフェなどに広がった。海外からもファンや同業者が訪れる人気ぶりだ。
 新型コロナウイルス感染拡大による売り上げ減少への懸念も、豆への深いこだわりがはねのけた。ネットや会員制交流サイト(SNS)を通じて抽出のコツを伝える映像配信といった工夫をこらし、通販の業績は順調に伸びた。実店舗でも豆の販売は堅調だ。
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 今月8日、西宮阪急(西宮市)で、「ゆげ-」「TAOCA-」も加わった共通ブランド「COFFEE GATE」のPRイベントが開かれた。無料配布のドリップバッグ2千袋は瞬く間になくなり、各店自慢の豆や粉なども次々に売れた。
 西宮に根付くコーヒー文化を地域ぐるみでブランド化する「にしのみやコーヒーの扉プロジェクト」。発案したのは「ディーシーエス」(西宮市本町)の左野(さの)徳夫社長(53)だ。同社は高品質を誇る海外製の焙煎機などの輸入販売権を持ち、市内でカフェ「COFFEE HOUSE FIELD」を営む。起業者の支援も重ねてきた。
 左野社長は「コロナ禍の今こそ、コーヒーで人と人をつなぎたい」。「ゆげ-」の岡本靖広社長(36)は「粉よりも豆の売れる割合が高まっている。自分で豆をひき、楽しむ人が増えている」と、コーヒー文化の深まりに手応えを感じている。
■スイーツ、パンの名店多数 コラボ企画で文化醸成へ
 始動した「にしのみやコーヒーの扉プロジェクト」。西宮市には、コーヒーと相性が良いスイーツやパンの名店が多く、一体となった展開への期待も高まる。関係者は「コーヒーでさらに西宮の住み心地を高めたい」と意気込んでいる。(小林伸哉)
 プロジェクトに加わる西宮観光協会は2016年から、焙煎(ばいせん)・抽出のセミナーや、阪急苦楽園口駅周辺で人気の焙煎所巡りを企画してきた。担当者は「スイーツやパンの名店が多いエリアと、焙煎所が多いエリアが重なる。地域文化の魅力を発信する強みになる」とし、パン店などとのコラボ企画も見据える。
 プロジェクトを発案した「ディーシーエス」の左野徳夫社長は、参加店舗を増やし、通販の情報発信を強化する考えだ。市内や全国の人気店を集めたコーヒーフェスティバルも視野に入れる。
 左野社長は「目指すのは豪州メルボルン」と語る。同地は、おしゃれなカフェが立ち並び「世界で最も住みやすい都市」と賞されるという。プロジェクトの問い合わせは、西宮観光協会TEL0798・35・3321

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