全感覚で捉える「現代美術」 神戸・BBプラザ美術館で館蔵品展
2020/08/22 12:10
即興で描かれた堀尾貞治の抽象画「あたりまえのこと(一分打法上から下へ)」(手前)=BBプラザ美術館
 館蔵品による企画展「コレクションにみる 拡がる現代アート 眼で聴き、耳で視(み)る」が神戸市灘区のBBプラザ美術館で開かれている。津高和一、上前智祐、堀尾貞治ら、地元兵庫で活躍した美術家らの作品を中心に絵画、版画や立体アート約130点を出品。現代美術の表現の豊かさ、多彩さを伝える。
          
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 同館は2009年の開館以来、地元作家の個展や企画展を開催。その都度、出品作家や遺族らから作品を寄贈され、現代美術の収蔵品を充実させてきた。今回はその蓄積の一端を示す。
 上前、堀尾や嶋本昭三、元永定正ら、前衛集団「具体美術協会」の元メンバーたちの作品が目を引く。堀尾の「あたりまえのこと(一分打法上から下へ)」は、同館での個展で、堀尾が公開パフォーマンスとして即興で制作した絵画で、一瞬で仕上げた大胆、カラフルな一作だ。
 阪神・淡路大震災で亡くなった津高が1980年ごろに挑んだ、伝統和紙を用いた作品も興味深い。西宮・名塩の雁皮紙(がんぴし)を使い、職人の協力を得て、紙すきの段階で顔料を加えたり、ガーゼなどを貼り付けたりしたとみられる。灰色の濃淡や水色の淡いにじみが繊細な美をつくりだしている。
 展覧会の副題「眼で聴き、耳で視る」は津高が残した言葉。美術とは単純な視覚や聴覚を超え、あらゆる感覚を総動員し感受・察知するもの、との考えをそう表現した。この言葉の意味を探りつつ、五感を研ぎ澄まし、目の前の「美」や「奇」を堪能したい。
 28日まで。土曜休館。開館は午前10時半~午後0時15分、午後1~4時。同館TEL078・802・9286
(堀井正純)