コロナ禍で注目「電動キックボード」通勤、近場の足に 神戸市、公道で実証実験
2020/12/08 14:10
「操作の感覚が自転車に近い」。電動キックボードを乗りこなす神戸市職員=神戸市中央区加納町6
ちょっとした移動の足として、電動キックボードに注目が集まっている。神戸市は職員らが公道を走る実証実験を始め、兵庫県姫路市のベンチャーは車体の製造販売に乗り出した。新型コロナウイルス禍で、通勤電車などの「3密」を避けられる点も期待されている。(大島光貴)
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片足で蹴ってスーイ、スイ-。11月下旬。ヘルメット姿の神戸市職員が電動キックボードに乗り、市役所周辺を駆け抜けた。
運転は単純だ。細長い板に片足を乗せ、もう一方の足で地面を蹴る。安定したら両足で立ち、ハンドルのアクセル、ブレーキを操り加速、停止する。内蔵モーターで時速19キロまで出る。
「5分の練習で乗れるようになった」と職員。車体には通信機能や衛星利用測位システム(GPS)を搭載し、スマートフォンのアプリでロックをかけたり、はずしたりできる。
実験は、シェアリングサービスを手掛けるベンチャー企業mobby ride(モビーライド、福岡市)と来年3月まで行う。職員らが14台を共有して庁舎間を移動し、使い勝手を検証する。
市交通政策課は「(駅やバス停と目的地を結ぶ)ラストワンマイルの交通手段になる」とみており、「都心での近距離移動を補えるのではないか」と期待する。
姫路市のベンチャー企業E-KON(イー・コン)は、約7万~約12万円の4機種を製造、販売している。外国製品を取り寄せて研究し、日本の保安基準を満たすように車体を設計。中国の工場で委託生産する。岡田慶太代表(33)が海外で乗り、利便性に魅せられたのがきっかけで昨年、脱サラ創業した。
30~50代の男性をターゲットにインターネットで販売し、首都圏を中心に10月までに約600台が売れた。3~4時間の充電で約35キロ走れる製品(約9万円)が人気で「都心のお客さんから、電車に乗らなくてよくなったと感謝された」とコロナ禍の追い風も感じる。観光地から引き合いもあるといい、販売代理店や提携する修理業者を増やして需要の先取りを目指す。
米ボストンコンサルティンググループは、電動キックボードのシェアリング市場が2025年に世界で4兆~5兆円規模になると予測。欧米、中国が中心だが、日本でも拡大が見込まれる。
岡田代表は「2、3キロの移動に最適。視界が高いので気持ちいい。折り畳んで車に積める」とPRしている。
■免許、ナンバー必要普及の壁に
電動キックボードは、道路交通法で原動機付き自転車(原付)に分類される。2002年の警察庁通知によると、実際に使うには、運転免許やナンバープレートが必要。車道を走り、運転者にはヘルメットの着用が義務付けられている。
しかし、こうした規制が普及を妨げているとの声もある。シェアリングや販売事業者の団体は、ヘルメット着用を免除したり、低速にした上で自転車歩行者道を走れるようにしたりするなど、法律の見直しを政府に求めてきた。
近年、新しい乗り物が登場し、交通ルールの見直しが求められている現状を受け、警察庁は7月、有識者検討会を設置。電動キックボードに関する討議では「車道走行は自転車以上に危険」との指摘や、「自動車、歩行者、その中間の速度で走る車両で通行帯を分けては」という提案が上がっている。
神戸市の実証実験では、政府は特例で自転車専用通行帯の走行を認めている。モビーライドの日向(ひゅうが)諒社長(32)は「どういう車両区分にするのが適切なのか、実証実験のデータを踏まえ、さらに議論をしていきたい」と話している。