井戸知事が県議会で退任表明 来年の知事選に立候補せず

2020/12/11 12:20

来年7月末の任期満了での退任を表明する井戸敏三兵庫県知事=11日午前、県議会議場(撮影・秋山亮太)

 兵庫県の井戸敏三知事(75)は11日の県議会本会議で、来年夏に予定される次期知事選に立候補せず、同年7月末の任期満了で退任する意向を明らかにした。阪神・淡路大震災の復興事業が節目を迎え、行財政改革など重要施策にも道筋がついたことなどを理由とした。5期20年に及ぶ長期政権にピリオドが打たれる。 関連ニュース 井戸知事「後継、副知事が有力」 退任の可能性示唆 センチュリーに公用車変更「一度乗ってみて。知事車にふさわしい」 兵庫県知事会見 これからの兵庫は? 7つの課題 井戸知事の退任表明【発言詳細】(2)

 井戸知事は本会議で自ら発言を求め、「新しい時代をつくる。これは新しいリーダーの元でつくり上げるべきだ」と述べ、退任を表明した。
 発言などによると、退任の意向を固めた背景には、震災から25年が経過し、復興にまつわる施策が一定の成果を上げたことがある。被災者の生活再建や産業再生を支援してきた「震災復興基金」は2020年度末で役割を終え、地震や津波対策など防災・減災の基盤づくりを軌道に乗せた。
 震災の復旧・復興で危機に陥った財政を立て直すため、08年度からは11年間に及ぶ行財政構造改革を断行。10年後の県政を見据えた将来像をまとめ、実現に向けたプロジェクトや地域創生の推進にも道筋をつけた。
 一方、任期の最終盤は新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、医療体制の拡充など対応に追われた。悪化した地域経済の再生が急務となり、税収減を見越した予算対応を余儀なくされている。井戸知事は、関係者にはコロナ禍の最中での退任表明に迷いを見せる一方、「コロナの対応と退任表明は別」とも話していたという。
 井戸氏は17年の前回知事選で多選批判にさらされながらも、県政史上最多の5選を果たし、2代前の坂井時忠氏(知事在任16年)を抜いて最長在任記録を更新した。このため、今期限りの退任もささやかれ、井戸氏もそうした意向を周囲にほのめかしていたが、正式には態度を明らかにしていなかった。
 来年夏に予定される次期知事選では、現在のところ、立候補表明者がおらず、井戸氏が退任の意向を固めたことで、にわかに動きが加速する可能性もある。
 井戸氏の後継を巡っては、同じ総務省出身の金沢和夫副知事(64)が有力とされる。県議会最大会派の自民党は金沢氏を軸に支援候補を協議中だが、一部に反発もある。このほか、県内で勢力を伸ばす日本維新の会なども独自候補の擁立に向けて検討している。(紺野大樹)
【井戸敏三(いど・としぞう)】兵庫県新宮町(現たつの市)出身。東大法学部を卒業後、自治省(現総務省)に入り、大臣官房審議官などを歴任した。震災後の96年に副知事に就任。任期途中で辞職した故・貝原俊民氏の後継として01年7月、知事に初当選した。5期目。20年12月まで10年間、関西広域連合長を務めた。

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