経費は借りて黒字化60年後 兵庫みどり公社の造林事業
2021/01/06 05:30
神戸新聞NEXT
民有地に造林して収益を上げる「分収林事業」を進めるため、兵庫県の外郭団体「兵庫みどり公社」が2010~19年度の10年間で、金融機関に借入金の利息計62億500万円を支払ったことが明らかになった。長期借入金は、19年度末時点で667億9500万円に。うち、この分収林事業の経費が大半を占める。県や公社の担当者は「分収林事業は長期的な事業で、収益となる木材の本格伐採はこれから。県の行革プランに基づいて計画的に経営している」と強調する。
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分収林事業は、国の造林政策の一環。林業保護や高度経済成長期の住宅用建材確保などのため、主に都道府県主導で事業を担う公社が設立された。ところが1980年代以降、安い外国産材の輸入で、国産材価格が急落したことなどが経営を圧迫。全国的に林業公社の廃止や清算が相次いでいる。
兵庫みどり公社は2019年度末時点で、日本政策金融公庫から323億8800万円、民間銀行から344億600万円を借り入れている。利息や管理費などがかさみ、12年度末時点の計567億5700万円から、約10年で負債が100億円以上増えた。計画では25年度にピークの約700億円になるという。利息はこの10年間で徐々に減っているが、年間4億9900万~7億8300万円を支払った。
■担当者「防災に寄与、長い目で見て」
県などによると、今から約10年先の本格的な伐採時期を迎えるまで、植栽や間伐、作業道の整備、人件費などは借金に頼らざるを得ないという。長期的な計画のため、金融機関との契約では繰り上げ償還(前倒しの返済)などが原則として認められておらず、利子がかさむ“借金体質”が続いている。
県の担当者は、「国の枠組みで推進された事業。公社の経営努力も必要だが、国への財政支援も引き続き求めたい」と話す。
みどり公社の担当者は、間伐材などを利用した燃料用チップや良質な建材などの需要増により、現時点でも期待できる収益があると説明。その上で、「分収林は森林の荒廃を防ぎ、防災機能を高めるなど収益以外の公的な側面もある。約60年後には借入金がなくなり、黒字になる。経済性、公益性両面で長い目で考えてほしい」と訴える。(藤井伸哉)
【兵庫みどり公社の分収林事業】民有地に造林し、伐採時に収益を地権者と分け合う事業。みどり公社の前身、兵庫県造林公社が発足(1962年)した直後から取り組んでいる。阪神甲子園球場約5650個分に当たる2万2千ヘクタールで、スギやヒノキなどを生育させている。ヒノキは2030年ごろ、スギは50年ごろ、本格的な伐採時期に入る。