顧問が設けた生徒間の謝罪の場、被害生徒をさらに追い詰める 市尼崎高いじめ
2021/03/18 07:00
市立尼崎高校のいじめ問題について調査結果を報告する第三者委員会の会見=17日午後、尼崎市役所(撮影・斎藤雅志)
「いじめへの感度が鈍すぎる」。兵庫県尼崎市立尼崎高校の水泳部で女子生徒2人がいじめ被害を訴え、転校に追い込まれた問題。弁護士や教育専門家らでつくる第三者委員会は17日、報告書の概要を明らかにし、学校や市教育委員会の姿勢を厳しく批判した。
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スポーツ強豪校の同校では2019年、男子バレー部や硬式野球部での体罰が発覚。今回のいじめ被害2件も17、19年に起きており、体質が問われている。第三者委は、部活動の中心選手らが所属する同校の体育科を「成績至上主義で閉鎖的」と指摘。問題が起きても内部で解決しようとし、学校が組織的に対応できない風潮があるとした。
報告書ではいじめについて、17年の事案は、被害生徒が同級生から無視され、嫌がらせ目的で批判された▽精神疾患と診断された後も無理解な質問をされた-などの点を認定。19年の事案では、被害生徒が「孤立している」と男子部員に相談したことを他の女子部員らにとがめられ、謝ったが受け入られずに叱責(しっせき)された点などをいじめと認めた。
また、第三者委は、顧問が被害生徒2人や保護者から被害申告を受けたにもかかわらず、十分な対応をせず管理職への迅速な報告も怠ったため、事態が深刻化したと指摘。顧問は生徒間の話し合いや謝罪の場を設けたが、それが被害生徒をさらに追い詰め、不登校に至らせたと結論付けた。
また市教委に対して、高校の不登校に関する調査をせず、転校したことを「解決した」とみなして対応をやめた点について「認識が不十分だった」とした。
同市の松本真教育長は「被害生徒の心情を理解せず、いじめへの認識も欠けていた。被害生徒、保護者に深くおわびする」と述べた。(山岸洋介、村上貴浩)