「いじめへの感度が鈍すぎる」。兵庫県尼崎市立尼崎高校の水泳部で女子生徒2人がいじめ被害を訴え、転校に追い込まれた問題。弁護士や教育専門家らでつくる第三者委員会は17日、報告書の概要を明らかにし、学校や市教育委員会の姿勢を厳しく批判した。
スポーツ強豪校の同校では2019年、男子バレー部や硬式野球部での体罰が発覚。今回のいじめ被害2件も17、19年に起きており、体質が問われている。第三者委は、部活動の中心選手らが所属する同校の体育科を「成績至上主義で閉鎖的」と指摘。問題が起きても内部で解決しようとし、学校が組織的に対応できない風潮があるとした。
報告書ではいじめについて、17年の事案は、被害生徒が同級生から無視され、嫌がらせ目的で批判された▽精神疾患と診断された後も無理解な質問をされた-などの点を認定。19年の事案では、被害生徒が「孤立している」と男子部員に相談したことを他の女子部員らにとがめられ、謝ったが受け入られずに叱責(しっせき)された点などをいじめと認めた。
また、第三者委は、顧問が被害生徒2人や保護者から被害申告を受けたにもかかわらず、十分な対応をせず管理職への迅速な報告も怠ったため、事態が深刻化したと指摘。顧問は生徒間の話し合いや謝罪の場を設けたが、それが被害生徒をさらに追い詰め、不登校に至らせたと結論付けた。
また市教委に対して、高校の不登校に関する調査をせず、転校したことを「解決した」とみなして対応をやめた点について「認識が不十分だった」とした。
同市の松本真教育長は「被害生徒の心情を理解せず、いじめへの認識も欠けていた。被害生徒、保護者に深くおわびする」と述べた。(山岸洋介、村上貴浩)