混乱続く高齢者ワクチン予約 窓口殺到、電話つながらず、サーバーパンク… 打開策なく、供給待ち

2021/04/22 21:50

兵庫県内で先駆けて高砂市が設置した新型コロナウイルスのワクチン接種の予約受付コールセンター。鳴りっぱなしの電話にオペレーターが休みなく対応していた=4月5日、高砂市高砂町朝日町1、高砂市文化保健センター(撮影・長嶺麻子)

 新型コロナウイルスの感染第4波が猛威を振るう中、高齢者のワクチン接種の予約を始めた兵庫県内各市町に申し込みが殺到し混乱が続いている。電話はつながらず、インターネットの申し込みに慣れない高齢者らの不満が噴出。市町側は急きょ受け付け態勢を増強したり、接種券の配布を延期したりして混乱回避を図るが、打開策を見いだせていない。 関連ニュース 【詳報】兵庫で過去2番目547人感染 707人が入院、過去最多 高齢者ワクチン、新たに708箱配分 82万8360回、高齢者の3割分 コロナワクチン集団接種 9020回分の予約終了 淡路市

 県内では5日の高砂市と養父市を皮切りに、22日までに14市町で予約を受け付け始めた。多くの市町で開始早々に殺到し、電話がつながらない市民が窓口に詰めかけるなどして混乱。洲本市の担当者は「不公平感がないように誰でも使える電話だけにしたが、予想以上」と困惑する。
 そんな前例を踏まえ、20日から予約を始めた神戸市は、若者らが高齢者のネット予約を手伝う「お助け隊」を区役所などに設置。インターネットでの予約に誘導し、電話の集中を避ける狙いだった。
 ところが、初日に一時予約が受けられなくなり、2日目はアクセスの集中でサーバーがパンク状態に。電話もつながらず、同市垂水区の女性(72)は「78歳の夫に基礎疾患があって出歩けないのに、何回電話してもだめ」と不満を募らせる。
 神戸市は22日、コールセンターを2・5倍となる300回線まで段階的に拡大し、サーバーの増強や「お助け隊」の増員などの強化策を発表。手続きがスムーズに進むよう高齢者がコールセンターを利用する際、接種券を用意することを呼び掛ける。
 これから予約開始を迎える市町は戦々恐々としている。5月3日からの予約開始を発表していた三田市は急きょ、4月30日に75歳以上を対象に先行予約を受けることに。伊丹市は65歳以上を対象に5月6日から予約を受ける予定だったが、最初は75歳以上に絞った。ただ、急な変更にウェブサイトは対応できず、電話のみになる。
 丹波篠山市は、23日にも接種券を発送する予定だったが22日、1カ月程度の延期を決定。接種予約が始まる5月20日ごろに発送し、接種券の受け取りと申し込みまでの期間を縮小することで混乱を避けるという。
 ワクチンは希望者全員が接種できるため、各市町は冷静な対応を呼び掛けるとともに、国に早期の供給スケジュール提示などを求めている。(高田康夫、小谷千穂、初鹿野俊、堀井正純)
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 新型コロナウイルスワクチンの具体的な供給スケジュールがいまだ示されておらず、兵庫県内各市町は予約枠の設定に苦慮している。確定した供給量の分だけ予約を取る市町や、今後の供給を見込んで夏ごろまでの予約を取る市町。高齢者らはいつ接種できるか見通しが立たず、感染への不安がぬぐえない。
 国から県内各市町へのワクチン配分で、確定しているのは5月3日の週までの228箱(1箱195瓶)だけ。国はその後、供給量を増やし、6月末までに65歳以上すべての人のワクチンを供給するとしているが、スケジュールが分からない。
 そんな中、高砂市や養父市などは確定したワクチン量だけ予約枠を設定し、予約を受け付けた。先着順のため、開始早々から電話が殺到。相生市では480人の枠がたった5分で埋まり、希望者らの不満が募る形になってしまった。
 一方、神戸市は今後に供給されるワクチン量を想定し、19万人の枠を設定。現在、予約の対象となっている75歳以上は約24万人で、希望者のほとんどが予約を取ることができるとみられる。加西市や淡路市などでも、今後の供給を見込んで先々の予約を受ける。ただ、見込み通りにならなければ、予約の取り消しなど混乱のリスクも抱える。
 一方で、住民から予約を取らない市町もある。宍粟市は事前に意識調査を実施し、接種希望者に日時などを割り当てて通知する予定だ。予約時の“早い者勝ち”はなくなるが、都合が悪い住民は調整が必要な上、ある程度のワクチン量がなければ集団接種を始められない。同市は5月上旬の開始を想定していたが、国からのワクチン供給が確定しないため、実施を遅らせるという。
 少ないワクチン量で高齢者接種が始まったことで、各市町が難しいかじ取りを強いられている。(高田康夫)

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