コロナ死者の公表基準、兵庫の自治体ばらばら 姫路市は年代・性別・判明日も非公開
2021/06/07 05:30
神戸新聞NEXT
新型コロナウイルスによる死者の情報について、公表基準が自治体ごとに異なっている。兵庫県内では、県が居住市町名や死亡日などを非公表にする一方、尼崎、明石市は感染判明日や基礎疾患の有無も含めて原則公表しており、判断はさまざま。国の基準がない中、専門家は「関心が高い情報で公表は必要。第三者を交えて基準を考え、非公表の場合は丁寧に理由を説明するべきだ」と指摘する。(霍見真一郎)
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市町名、死亡日、保健所名…。全員分が黒く塗られていた。神戸新聞の情報公開請求で兵庫県が示した5月末までの新型コロナ死者286人分のリスト。「個人の特定につながる」と黒塗り部分は非公開だった。
年代と性別は公開された。市町名などの非公開理由は「通夜、葬式等の状況と関連付けて、間接的に個人を識別することができる」「新型コロナによる死亡情報は、遺族にとって通常人に知られたくない情報であると考えられる」などと記されていた。
県は新型コロナの死者について、昨年3月11日に初めて発表し、同30日の8人目まで、年代▽性別▽職業▽居住地▽経過・症状-を公表。9人目から公表範囲を狭めた。
一方で、そうした方針を取りつつ、県は報道機関に死亡者情報を広報する際、年代と性別以外を非公表にする理由を「ご遺族の意向」としてきた。
県感染症対策課の西下重樹課長は「遺族には『年代と性別だけでも公表させてほしい』といった尋ね方をしている」と居住地公表などは十分確認していないことを明かし、「これからは発表時の表現を工夫したい」と話した。
さらに今後、西下課長は「個別患者の公表と、死亡統計の公表は異なると考えている」と非公開情報を何らかの形で公表する可能性を示唆。その上で、「個人が特定される恐れがないよう検討したい」と重ねた。
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兵庫県内で独自に死者を発表している政令市と中核市では、姫路市が死者の年代と性別を非公表。死亡リスクが高いとされる基礎疾患の有無は、神戸、西宮、姫路市が非公表だった。
尼崎、明石市は年代、性別、居住地、死亡日、感染判明日、基礎疾患の有無の全てを原則公表。両市とも「公表している情報の範囲では個人は特定されない」と判断したという。
東京都と大阪府は兵庫県と同じように死者の居住市町村を公表していない。
だが、東京は死亡者の感染判明日と死亡日を公表。都の担当者は「遺族の了承なく情報提供できる範囲でしているため、居住地は非公表にした」と話す。
大阪府も、基礎疾患の有無とともに死亡日を公表しており、担当者は「死亡確認した日と亡くなった日は異なり、実態と異なる情報を伝えることになってしまう」と理由を語った。
神奈川県は、死者の居住市町村名をはじめ、死亡までの経過も原則公表している。患者情報の公表方針を議論する有識者検討会で基準を決めた。担当者は「個人の特定がされない範囲で、できるだけ行動変容につながる情報を出さなければならない」と話す。
愛知県は遺族に項目ごとに意向を確認。了承を得た内容だけを公表している。
関心強い情報、公表の必要性高い【興津征雄・神戸大大学院教授(行政法)の話】
新型コロナウイルスで亡くなった人に関する情報には県民の関心が強く、公表する必要性が高い。一方で、プライバシーにも十分配慮しなければならない。自治体が、個人が特定される恐れがあるという理由で一部の情報を非公表にする場合は、丁寧な説明が求められる。具体的にどういった基準で公表するかについては、自治体が一方的に判断するのではなく、有識者などを交えて第三者の視点から議論を重ねた上で、決めることが望ましい。
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