「老後、駄目に」クボタ石綿禍、発覚16年 周辺住民の被害386人に なお拡大「放置、国に責任」

2021/06/25 05:30

古い地図のコピーを広げ、クボタ旧神崎工場と自宅の位置を示す幸野正吾さん=尼崎市長洲中通1

 兵庫県尼崎市の機械メーカー「クボタ」旧神崎工場の内外でアスベスト(石綿)被害を出したクボタショックから16年になろうとするが、今なお被害者は増え続けている。支援団体の尼崎労働者安全衛生センターによると、周辺住民の被害はこの1年で17人増え、386人に。闘病中の幸野正吾さん(60)=尼崎市=は「風化させてはいけない。自分が被害者になったら、家族が発症したら、友人なら…と想像してほしい」と語る。(中部 剛) 関連ニュース 「病魔今ごろ暴れだした」クボタ石綿被害、15年で600人に 「クボタ・シヨツク」15年伝える 家族の会が冊子など無料配布 「船上では石綿が雪のように」肺がんの男性3人が勤務先提訴


 同センターは被害について、クボタに救済金を請求した住民、労災認定された工場従業員や下請け業者ら関係者を合計すると「600人をはるかに超す」と指摘する。石綿を吸い込んでから潜伏期間を経て発症するため、新たな石綿疾病の発症が続いている。
 幸野さんは2019年12月の健康診断で左肺の異常が見つかり、その後の検査で胸膜中皮腫と診断された。石綿疾病だ。クボタショックから10年以上過ぎており、「何かの間違いであってほしい」と願ったという。10時間の手術を経て腫瘍を取ることができたが、今も胸はピリピリと痛み、再発の不安は拭えない。
 救済金の手続きでクボタ社員と向き合った際、「(あなたと)体を取り換えてほしい」と訴えた。治療に専念するため会社を退職し、「楽しみにしていた老後の生活も駄目になってしまった」と話す。
 クボタに石綿問題を風化させないよう社内教育の徹底を求める一方、国に対して怒りを募らせる。「危険な石綿をなぜ規制しなかったのか。規制していれば、こんなにたくさんの患者が出なかったはず」
 石綿建設訴訟の最高裁判決を経て建設労働者らへの給付金制度を創設する法律が成立。しかし、石綿工場や建設・解体現場周辺の一般住民が発病しても対象になりそうにもない。石綿健康被害救済制度はあるが、幸野さんは「現行制度では不十分」といい、抜本的な改正を求めている。
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 患者団体が26日午後1時、アスベスト被害の救済と根絶を目指す尼崎集会を、尼崎市長洲中通1の小田南生涯学習プラザで開く。申し込み必要TEL06・4950・6653

【クボタショック】2005年6月29日、機械メーカー「クボタ」が、尼崎市の旧神崎工場従業員ら78人が、石綿が引き起こすとされるがん、中皮腫で亡くなっていると発表した。翌30日、工場近くに住む3人が健康被害を告発。その後、周辺住民の被害が次々に明らかになり、大きな社会問題となった。工場では大量の石綿を使用しており、クボタは工場を中心に原則1・5キロ圏内の被害者に救済金を支払う制度を設けた。

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