次世代エネ活用に弾み 水素抽出高効率の新触媒 兵庫県立大院・森下教授が開発

2021/08/25 11:58

アンモニア化合物の水溶液から水素を取り出す実験を見守る森下政夫教授(手前)=姫路市書写、兵庫県立大

 次世代エネルギーとして注目される水素について、化合物から取り出す際、高価な白金並みの高効率で発生させられる代替触媒の開発に、兵庫県立大大学院工学研究科の森下政夫教授(63)が成功した。水素を安全に利用する技術への応用が期待できるという。成果は英国王立化学会誌に掲載された。(古根川淳也) 関連ニュース 市長専用車に“一番人気”の「クラウン」を選ばず「カムリ」を選んだ訳 会合入り口でストップ!「黒塗りなら、すっと入れる」 公用車オデッセイの市長 公用車「センチュリー」を“封印” 斎藤新知事 登庁はワンボックス車

 水素は燃料電池車などでの利用が見込まれるが、ガソリン車並みの航続距離を実現するには、常温の気体だと約6万リットル必要で、車の60リットル程度の燃料タンクに充てんするには約千気圧で圧縮しなければならない。
 一方、アンモニアなどに結合させた液体の化合物の状態であれば、常温常圧の運搬などが可能になるが、燃料として使うために水素を素早く取り出すには高価な白金の触媒が必要だった。
 森下教授は白金の代用物として、電子配列が似ていながら触媒としては機能しないタングステン炭化物(WC)に着目した。WCにコバルトナノ結晶を加えると、白金と同水準の効率で水素を取り出せるようになったという。
 白金は磁気に反応しやすく、WCは反応しない。磁力を持つコバルトが加わることで、水素の原子核が分子単位の磁力で引き寄せられ、触媒として作用するようになったと考えられるとしている。
 WCは半世紀前から活用が模索されており、森下教授は「磁場を利用した触媒の設計は世界で初めて。白金は触媒として広く使われており、多くの用途で代用できる可能性がある」と話している。

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