菅首相就任1年 識者に聞く「理想のリーダー像」 元ラグビー日本代表メンタルコーチ荒木香織さん

2021/09/16 05:30

荒木香織さん(株式会社CORAZON提供)

 菅義偉首相は16日、就任から1年を迎えます。政権発足当初から新型コロナウイルスの対応に追われ、今月退陣を表明しました。自民党総裁選を経て、日本のかじ取りは新しい首相に託されます。未曾有の危機に直面する中で、求められるリーダー像とは何か。 関連ニュース 【政治決戦へ人事加速】にじむ恩賞、菅カラー 「反石破」取り込み苦心 【自民総裁選】狙う「小泉劇場」再現 菅氏の影、院政懸念 菅前首相、神戸・ポーアイの水素関連施設を視察 世界初の運搬船に乗船 「脱炭素を応援したい」

■元ラグビー日本代表メンタルコーチで、園田学園女子大学教授の荒木香織さん=スポーツ心理学 
--荒木さんは2012~15年、ラグビー日本代表のメンタルコーチを務めました。著書「リーダーシップを鍛える ラグビー日本代表『躍進』の原動力」(講談社)でも、「チームの成功を引き出すには適切なリーダーシップが欠かせない」と書いています。想定外ともいえるコロナ禍、どんなリーダーが必要でしょうか?
 困難に直面した時、リーダーはその困難について一番に理解しているのだと、言動で示すことが必要です。
 一般市民にとっては想定外の困難だけど、リーダーは困難の要因が何であり、どういう状況にあるかを『理解している』ことを示すのです。それは安心につながります。そして、今の状況と達成すべき目標、それまでのプロセスを説明し、先にある希望を示すことが大切です。
 リーダーは知識、情報を伴わないと、人の心は動かせません。現状も未来も分からないけれど、『とにかく頑張りましょう』では、何をどうすればいいか分かりません。
 
--コロナ禍の現状をどう見ていますか?
 今は、情報がなさすぎます。緊急事態宣言をなぜ延長するのか、やめるのか分かりません。達成したい目標も見えません。お願いばかりで不明瞭なことが多すぎるのは、良くないリーダーシップといえます。

--新しいリーダーに求めることは?
 具体的に説明する必要があると思います。『勝負の3週間』とか、そういう発信ではなくて。数字で分かりやすく示し、例えば…、みなさんの行動がこうだから、こういう状況になっている。そして、こういう効果を望んでいるので、みなさんにこうしてほしい、とか。具体的に説明してほしいです。
 また、リーダーは、トップダウンで自分の考えを押しつけるのではなく、多様な人の話を聞くスキル(技術)が必要不可欠です。話というのは、本腰を入れて聞こうと思わないと、聞けません。そして、聞くスキルを持ち合わせていない人は、リーダーでいるべきではないと思います。話を聞くからこそ、その人たちに良い影響を還元できるのです。
 リーダーにカリスマ性はいりません。リーダーシップは資質ではなく、スキルです。
(中島摩子)

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