五輪の影、すみか追われた人たち 映画「都営霞ヶ丘アパート」宝塚で15日公開

2021/10/07 09:52

映画の一場面「菊池さんの引っ越し」(c)Shinya Aoyama

 賛否両論あった「東京2020オリンピック」。その祭典の影でひっそりと取り壊された公営住宅がある。「都営霞ヶ丘アパート」。国立競技場に隣接し、オリンピックに伴う再開発だった。ついのすみかを追われ、翻弄される住人たちを追ったドキュメンタリー映画が15日から兵庫県内で公開される。青山真也監督に話を聞いた。 関連ニュース 3000m障害のエース三浦龍司、9月の東京・世界選手権で初の表彰台へ 東京7位、パリ8位。五輪2大会連続入賞の記憶と、成長の足跡 ヴィッセルFW宮代、今季初ゴールへ意欲「焦りはない」 6日に国立で新潟戦 <有島弘記のパリ通信>郊外の新駅は東京・国立競技場似?

 「ここ(都営霞ヶ丘アパート)は1964年のオリンピック開発で建ち、独居の高齢者の多い公営住宅でした。団地内には畑などもあり、古い田舎が都会のど真ん中にあるような異様な感じだった」と青山監督。分け入ると、何十年も助け合い暮らしてきたコミュニティーが見えてきた。足の悪い住人のために部屋まで食糧を届ける小さな商店や、気心の知れた近所づきあい…。「記録したいと、ほぼ1人でカメラを持って住民を訪ね撮影をはじめた」という。
 老人同士で支え合う日常が、ある日突然、A4の紙1枚で立ち退き期限を告げられ、閉ざされていく衝撃。「あきらかにおかしい話なんだけれども、高齢者や障害者など、声すらあげられない。離れたくないと思いながら、住み慣れた場所を奪われるのは、大変な負荷がかかっていた」。
 カメラは引っ越し費用の心配をする食卓、写真の整理をする高齢者らを切り取る。ナレーションも解説も入れなかったのは、見る人の感覚を制限したくなかったから。「排除の歴史に『明日はわが身』と共感してもらえれば」と話す。淡々と、生活のひだを重ねる映像が胸に迫る。「オリンピック反対とは言ってないですよ。大きなものにのみこまれる、人間模様や感情を描きたかった」
 ドキュメンタリー映画「東京オリンピック2017 都営霞ヶ丘アパート」は15~21日、シネ・ピピア(宝塚市)で公開。(鈴木久仁子)

神戸新聞NEXTへ
神戸新聞NEXTへ