磨き抜かれた静謐な美 造形作家の堀尾昭子さん、西脇で個展
2021/10/30 09:23
出品作のタイトルはすべて「無題」。会場を訪れた堀尾昭子さんは「一人一人違う見方をされると思う」と話す=西脇市岡之山美術館
戦後日本を代表する前衛美術集団「具体美術協会」に1967年から参加し、今も創作を続ける造形作家の個展「堀尾昭子の現在」が、西脇市岡之山美術館(兵庫県西脇市上比延町)で開かれている。2018年以降に手がけ、大半が初公開の近作約50点を展示。身近な包装材などに「きれい」を見いだし、小さく磨き抜くように仕上げた。
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「そのとき、自分が好きなもの、一番作りたいものを作る」。神戸市兵庫区の造形作家堀尾昭子さん(84)の流儀だ。
徳島市出身で1960年代に神戸で看護師として働きながら創作を始めた。68年、具体の仲間で美術家の堀尾貞治さん(1939-2018年)と結婚。「互いの活動を尊重して心強かった」と振り返る。
かつては背丈を超える大型作品も手がけたが、徐々に小さな造形に興味が向かった。
直線を生かし、両手に収まるほどの作品群は、すっきりと無駄がない。素材によって、光は透過したり、はね返ったり。その淡く澄んだ色彩とともに影が生まれ、一つ一つが結晶のようにきらめく。
材料はプラスチック、鏡、菓子箱、ネジくぎ…と、身近なものばかり。「白い紙や木、アクリルは美しくて好き」
完成時の姿はできあがるまで分からないが「必然のように、色や形が決まってくる」という。「制作途中で“雑音”を切り捨ててゆく」と作品は小さくなる。「2、3ミリで全然違うからね」。繊細な作業を重ねる。
同館の山崎均副館長は「作品に必要なものだけを残し、不要なものすべてをそぎ落としたゆえの凛とした静謐(せいひつ)さに包まれている」と評する。
84歳の今も、毎晩1時間半ぐらい、3畳ほどのアトリエにこもって創作する。腰の調子がすぐれず、外出が難しい中で「生きがいのある一番いい時間。本当に『芸術は救いや』と思います」と言う。来年も各地で個展などが予定される。「もう年やし、先は分からない。一日一日、作れていて、ありがたいなあ」
12月5日まで。月曜休館。大人300円ほか。TEL0795・23・6223
(小林伸哉)