一刻を争う脳卒中治療、神戸の病院が独自手引でコロナ禍もスピード維持
2021/11/08 12:20
感染対策をした上、少ない人数で処置にあたるスタッフ=神戸市中央区港島南町2、市立医療センター中央市民病院(同病院提供)
脳卒中は、発症から治療開始までの時間が短いほど後遺症のリスクは小さくなる。新型コロナウイルスの感染防止対策が時間短縮の支障になるが、神戸市立医療センター中央市民病院(神戸市中央区)は手引をつくって対応。昨年春から約120人の治療にあたってきたが、治療に入るまでの時間はコロナ禍前と同程度に維持できているという。手引の概要は、日本脳卒中学会(東京都)に属する全国約千の医療施設で共有されている。
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脳梗塞や脳出血、くも膜下出血が含まれる「脳卒中」は、脳の血管が破れたり、詰まったりする病気で、治療までのスピードが極めて重要だ。治療開始が5分遅れるだけで、100人に1人、社会復帰できる人が減るといわれる。
しかし、昨年春のコロナ「第1波」では、PCR検査の結果が出るまでに長い時間が必要とされただけでなく、コロナ感染を疑って手順がもたつくと、死亡や寝たきりにつながる懸念があった。
同病院では1波で院内感染が発生した経験もあり、脳卒中患者がコロナに感染していた場合に備えた高レベルの対策を考えなければならなかった。スタッフが濃厚接触者と認定されれば、治療体制に大きく影響してしまう。
そこで、感染を前提とした治療の流れと、スタッフの配置、処置上の注意点をまとめた手引を作成した。例えば感染可能性がある患者を救急外来から検査や処置に移す際、スタッフが汚染された可能性がある防護具を着替えるなどしていると時間がかかるため、新しい防護具を着た別のスタッフがそばで待機してリレーする流れを考案。治療中に同時並行で行っていた資機材の準備を、患者が搬入される前に大人数で行って待ち構える方式に変更したことで時間短縮できた。
また、コロナ禍前まで、カテーテル治療を行う「血管造影室」には、1人の患者に対して医師や看護師ら10人ほどが出入りしていたが、これを医師3人、看護師1人の計4人に縮小。処置中はガラスを隔てた隣室から遠隔通信システムを使ってサポートすることにした。感染対策を解除する基準もフローチャートで記載し、迷う判断を一つ一つなくしていった。
実際の処置を通じて手引を幾度も見直した結果、ほぼコロナ禍前と同じスピードで治療に入ることができるようになった。現時点で脳卒中治療が原因となる院内感染もないという。
坂井信幸・包括的脳卒中センター長は「一刻を争う脳卒中の治療とコロナ診療をどう両立させるか熟考した。手引は、平時とほぼ同じ治療を維持するのに役立っている」と話している。(霍見真一郎)