「がんばろうオリックス」身売り、神戸移転、震災、イチロー、球団合併…いろいろあったけど、トモニイコウ

2021/11/10 22:04

オリックス・ブルーウェーブ時代からのファン、南郁夫さん=宝塚市内

 プロ野球オリックス・バファローズは、初めてのクライマックスシリーズ・ファイナルステージを戦う。25年ぶりのリーグ優勝の勢いそのままに、日本シリーズへの切符をつかむことができるか。長年応援してきたファンを取材し、チームへの期待やこれまでの思い出について聞いた。 関連ニュース オ1-0ロ(10日) 山本が完封、1点守り切る 【写真】オリックス球団の歩み 25年ぶり「神戸で胴上げできたら最高」 CS突破へオリックス田口コーチが意気込み


 ◇宝塚市の会社員南郁夫さん(61)
 幼少期に西宮・苦楽園に住んでいたこともあり、黄金時代の阪急ブレーブスを熱心に応援していた。チームは1991年に神戸に移転し、ブルーウェーブに。美しいグリーンスタジアム神戸を気に入ったこともあり、内野席に足しげく通うようになった。
 そんな中、阪神・淡路大震災が起こった。当時は神戸市東灘区に住んでおり、自宅は半壊。街は変わり果て、自身も避難生活を送った。あわただしく日々を過ごしてしばらく球場には行けなくなったが、「がんばろうKOBE」をスローガンに掲げたチームが躍進しているニュースに勇気づけられた。
 何とか時間をつくって球場に行くようになったが、前年までとはうって変わり、人があふれ返っていて驚いた。95、96年に連覇を達成。イチロー選手の優勝決定サヨナラタイムリーも、現地で見届けた。「人の力ってすごいなと思った。魔法のようだった」と2年間を振り返る。
 その後チームは低迷期に入ったが、閑古鳥が鳴く内野席に座り続けた。「三塁側の2階席は誰もいなくて、子どもが走り回っていましたよ」と笑う。
 身売り、合併という苦い歴史を知る南さん。正直、数年前まで複雑な思いがわずかにあった。が、今年のオリックスを見ていてその気持ちは完全に消えたという。
 「素晴らしい若手がいて、ベテランが引っ張る最高のチーム。ただ彼らを見守りたいという気持ちです」
 実は、ウェブマガジンで「南郁夫の野球観察日記」というコーナーを持ち、オリックスの記事を書いている南さん。T-岡田選手らを取材したこともある。胴上げの時も、T-岡田選手の姿を見つけて「本当によかったなあ」と胸が熱くなった。「このチームがどこまで行くか楽しみ」と期待する。

 ◇東京都港区の会社員内藤司さん(27)
 2002年から3年連続で最下位となったブルーウェーブ。その02年から応援し始めたという“猛者”だ。幼少期は神戸に住んでおり、グリーンスタジアム神戸(Yahoo! BBスタジアム)によく足を運んだ。閑古鳥が鳴く外野スタンドで応援歌を歌い、声をからした。
 関東に引っ越した後も、埼玉や千葉の球場で頻繁に応援。ブルーウェーブで好きだった谷佳知選手や塩崎真選手、早川大輔選手らのユニホームに袖を通している。
 「合併もあったし何度も最下位を経験したけれど、やっぱり好きなチームの優勝を見たくて応援し続けてきた」と内藤さん。「ここまできたら神戸での胴上げが見たいです」と力を込めた。

 ◇神戸市兵庫区の会社員山崎翔大さん(26)
 0歳の頃から、家族にグリーンスタジアム神戸に連れてこられていたという。物心ついた時にはチームは低迷期に入っていたが「1勝の喜びが大きいこと」が、山崎さんをさらに駆り立てた。1番好きだったのは谷佳知選手。走攻守そろったチームの要にあこがれた。
 リーグ優勝については「全然勝てなかった苦しい時も、あと一歩で優勝を逃した悔しい時もあったけれど、応援してきて本当によかった」と笑顔。応援歌の歌詞になぞらえて「このまま『かなうべき夢の先へ』進んでほしい」と語った。

 ◇大阪市大正区の会社員岸田安彦さん(54)
 小学生の頃から近鉄を応援。現在、妻と2人の子どもと一緒に家族ぐるみでバファローズに声援を送っている。
 1988年にあったロッテ-近鉄の悲劇のダブルヘッダー「10・19」は結婚する前のできごと。まだ野球への関心が薄かった妻と観戦した。優勝を逃した後、泣いて悔しがる彼女の姿を見て「僕の大好きな近鉄のことをこんなに思ってくれるなんて」と思い、これが結婚の決め手になったという。翌年から2人で藤井寺球場や日生球場に赴き、共に声援を送った。
 その後の合併で近鉄が消滅したことで嫌気がさし、6年ほどは野球を見ることすらやめていた。それでも、子どもたちが学校で優待券をもらってきたのを機に、京セラドーム大阪に通うように。年間50試合ほど足を運ぶ。
 近年、チームはBクラスに沈み、「周囲から小馬鹿にされたり同情されたりしながら応援していた」と苦笑。今年はチームの好調で家族の会話も増え、絆も深まったと感じる。「バファローズファンを続けて本当によかった」。さらなる快進撃に期待を寄せる。(小森有喜)

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