「倭小槌」の蔵元、井澤本家廃業へ サッカー元日本代表の中田英寿氏も愛飲

2021/12/02 21:25

11月末で事業を終えた井澤本家=兵庫県稲美町印南

 兵庫県稲美町の老舗酒造会社「井澤本家」が11月末で事業を停止したことが、分かった。日本酒離れが進む中、経営者が11月中旬に亡くなるなどしたため事業継続を断念。今後、清算手続きを進めて廃業する。知らせを聞いたファンが同社を訪れ、廃業を惜しんだ。 関連ニュース 知ってました?サラブレッドの馬ふんをいかした清酒白雪「勝利馬」が人気 お盆明けから再び販売 日本酒「白鹿」フィギュア売り切れ続出 ガシャポン向け、ラベルまで精巧に さらば酒蔵の大看板 最後の白鷹も撤去へ 兵庫・西宮

 同社は1883(明治16)年に創業した。自家栽培した酒米・山田錦を使い、手作業で仕込んだ銘酒はこくがあって芳醇ながら、すっきりとした後味が特徴。サッカー元日本代表の中田英寿さんも愛飲した。創業当時のままの酒蔵は、県の景観形成重要建造物にも指定されている。
 同社は、杜氏1人と5代目の井澤孝泰代表、長男ら数人で、代表銘柄の「倭小槌」を中心に醸造販売してきた。しかし、井澤代表が3年前にがんを患い、杜氏の高齢化や新型コロナウイルス禍による日本酒の需要回復が見通せない状況も踏まえ、取引先などに廃業を伝えていた。他社に酒造免許も譲渡しないという。
 県酒造組合連合会によると、加盟社が最も多かったのは1963年の251社で、現在は約70社まで減少。今回の廃業は、昨年3月の大熊酒造(同県加東市)以来という。
 廃業を知り、倭小槌を求めて訪れた人も多く、井澤代表の家族は「代表は悔しい思いだったはずだが、いろいろ考えた上での決断。お客さんの顔を直接見る機会はなかったが、倭小槌への思いなどが最後に聞けてよかった」と話した。(赤松沙和)

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