パラ初出場、教え子に届ける勇姿 生徒の憧れ、不屈の「先生スノーボーダー」6日予選
2022/03/05 20:40
勤務する和田山特別支援学校の壮行会に参加した田渕伸司(中央)。応援を力に変える=2月23日、朝来市和田山町竹田(同校提供)
初出場の北京冬季パラリンピックは、教え子に勇姿を届ける舞台になる。スノーボード男子(下肢障害LL2)の田渕伸司(40)=兵庫県たつの市出身=は2年前から、和田山特別支援学校(朝来市)の教壇に立つ。先月の壮行会では、担任する高等部2年生らに「精いっぱい競技する。その姿を見てほしい」と誓った。
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壮行会は2月23日に開かれた。同校ホームルーム教室の黒板は「田渕伸司選手 いってらっしゃい」と黄やピンク色のチョークで装飾され、オンラインを含めて参加した2年生9人が「金メダルを目指して」「練習の成果を発揮して」とエールを送った。応援うちわを手作りした生徒たちが田渕を囲み、一緒に写真に納まった。
田渕は豊岡高校(豊岡市)の数学講師だった2004年にスノーボードを始めた。インストラクターの資格を取るまでのめり込んだが、08年の練習中の事故で右足首が自由に動かせなくなる障害が残った。それでも教員生活を送りながらパラ競技に挑み、19年の世界選手権でバンクドスラローム3位に輝いた。
和田山特別支援学校には20年春から勤める。自身が障害者となり「障害のある子どもたちの教育を知りたい」と、40歳を前に異動を希望。出石高校(同)から転任した。
「子どもたちと心の距離を縮めて、同じ目線で教えている」。同特別支援学校の村井和幸校長は、主に肢体不自由の高校生に数学などを教える田渕の姿勢に目を細める。授業を受ける2年生の小西基裕さんも「数学の間違いを詳しく教えてくれる。親切な先生」と信頼を寄せる。
生徒にとっては頼りがいのある先生であり、憧れのスポーツ選手。壮行会は昨季のワールドカップ前に続いて2度目で、いずれも生徒たちが企画した。普段は内気な子が多いというが、田渕は「(頑張りを)見てくれていると思うと、感動した」と話す。
海外を転戦する田渕を学校側も支えてきた。数学の学習時間を確保するため、シーズンイン前に授業を詰め込んだり、不在時の生徒指導は同僚がサポートしたり。そして、ついにつかんだパラ切符。「みなさんの応援があって北京に行ける」と言う不屈の「先生スノーボーダー」は6日のスノーボードクロス予選から、感謝の思いを込めてパフォーマンスする。(有島弘記)