輪郭のゆらぎ、あいまいな境界線…美術家横尾さん、感覚の変化経て開いた境地　最新作一堂に

　兵庫県西脇市出身の美術家横尾忠則さん（８５）の最新作を一堂に並べた「Ｆｏｒｗａｒｄ　ｔｏ　ｔｈｅ　Ｐａｓｔ　横尾忠則　寒山拾得への道」（神戸新聞社など主催）が９日、神戸市灘区原田通３の横尾忠則現代美術館で始まる。８日に内覧会があり、新型コロナウイルス禍の中で生まれた作品など７２点が披露された。 関連ニュース 横尾忠則「恐怖の館展」　入場者が１万人突破 横尾忠則がつくる「お化け屋敷」　「あの世」「闇」など作品の世界観演出 「青空みたいな人」「“無為”だから続いた」横尾忠則さんら寂聴さん偲ぶ　阪神・淡路に「神も仏もない！」

　寒山と拾得は中国・唐時代の僧。俗世を捨てて詩を書いて暮らし、奇妙な風貌と奇行で知られ、画題にもよく用いられる。横尾さんは２人が持つ巻物をトイレットペーパーに、ほうきを掃除機にと現代風にし、軽やかな色使いで表現した。
　７２点のうち３１点は２０２０～２１年の作品。横尾さん自身が難聴や腱鞘炎などを患い、身体的な感覚の変化を受け入れて体得した「朦朧体」と呼ぶ新たな技法で描いた。輪郭がゆらぎ、背景と主体の境界線があいまいで、自身が体験している世界が反映されている。１９８０年代の作品も展示し、画家転向から間もないころの絵画と、最新作とを比べることができる。
　７月１８日まで。一般７００円など。月曜日休館（７月１８日は開館）。同館ＴＥＬ０７８・８５５・５６０７
（奥平裕佑）