円急落、ウクライナ侵攻で物価高騰 苦境の輸入業者、消費者も悲鳴…夏まで続く?

2022/04/16 06:00

原油高に加え、円安の影響もガソリン価格の高止まりに拍車を掛けている=神戸市内(撮影・横田良平)

 円相場が急落して約20年ぶりの安値水準となり、ロシアのウクライナ侵攻で進んでいた物価の高騰がさらに加速している。エネルギーや食品を輸入して国内で販売する企業からは、「仕入れ値の上昇を企業努力で解決できる段階ではない」とうめき声。価格の上昇分を転嫁される形の消費者も「これ以上、身の回りの値段が上がると…」と頭を抱える。 関連ニュース ウクライナに孤児養護の施設を建設へ 神戸の団体が建設、運営費の寄付募る 欧州から退避、物流再構築…事態打開へ急ぐ兵庫県内企業 ウクライナ侵攻 ロシア出身、姫路育ちの小原ブラスさん ウクライナ侵攻に「未来考え、世論つくることが大切」


 「給油するたびに価格が上がっている」。神戸市東灘区のガソリンスタンドを訪れた同区の男性会社員(44)が思わずもらした。「円安でさらに上がるかと思うと不安です」と困った表情を見せた。
 販売する側も苦労の連続だ。神戸市内でガソリンスタンドを経営する菱華石油サービス(同市長田区)では、この1年で1リットル当たりの仕入価格が20円程度上昇。内芝知憲社長は「努力で解決できる段階ではない。転嫁しないと途端に赤字」と訴える。
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 3月下旬、6年1カ月ぶりに1ドル=120円を超えた円相場。4月に入っても下落が進み、15日の東京外国為替市場では、一時1ドル=126円70銭をつけた。今後も金融緩和を続ける日本と、金融引き締めに動く米国との間で金利差が拡大するとみられ、さらに円安が進む可能性がある。
 「円安は仕入れコストの上昇につながる恐れがある」。業務スーパーを展開する神戸物産(兵庫県加古川市)は警戒感を高める。海外メーカーとの直接取引が多く、影響を受けやすいという。
 外食産業向け食品を輸入する商社の神栄(神戸市中央区)は、中国の協力工場で水光熱費や工賃などが上がり、国内の取引先に値上げを求めたばかり。円安で「さらなる値上げを受け入れられるだろうか」と悩む。
 資源価格の高騰にも拍車が掛かる。大阪ガスの標準家庭料金は、1年前から1163円も上昇。円安で液化天然ガス(LNG)の価格が上がり、担当者は「今後も上昇傾向が続くのでは」とみる。
 仕入れ品の輸入が多いベビー・子ども用品の西松屋チェーン(同県姫路市)は「お客さまの商品を見る目は厳しい」と値上げ回避に努める。売れ筋に絞って発注量を増やすなどし、低価格を維持する構えだ。
 ただ、正規輸入高級時計販売のカミネ(神戸市中央区)は、円安を受けた各ブランドの値上げの動きは「5月ごろから顕著に出てくるだろう」とみる。(まとめ・広岡磨璃)

■「悪い影響一辺倒ではない」
 一方、資産運用で「為替差益」を狙う人も。みなと銀行(神戸市中央区)では、外貨定期預金を円預金に替えて差益を確定する動きが目立つ。2021年度は円預金への転換が前年度比1・4倍に増えたという。
 日本総合研究所マクロ経済研究センターの西岡慎一所長は「円安は消費生活に響くが、昔と違って株式投資も広がっている。ウクライナ情勢で下落していた株価は円安によって一時回復するなど、悪い影響一辺倒ではない」と話している。
 また、西岡所長は「日米の金利差やウクライナ情勢など、円安に傾く環境が重なる一方、円高に向かうマグマも蓄積している」とも指摘。「コロナ禍が『ウィズコロナ』の段階に移り、半導体不足が解消して、自動車の輸出が活発化したり、外国人観光客が戻ったりすれば、再び円高に振れる可能性が高い。現在の状況が続けば夏以降まで1ドル=125円前後で推移し、その後円高に転じるのではないか」と分析する。
 ただし不透明な要素は多く、西岡所長は「ロシアへの制裁が原油や液化天然ガス(LNG)にまで及べばさらなる資源高となり、130円台に踏み込む恐れもある」とくぎを刺す。(広岡磨璃、高見雄樹)

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