ウクライナ避難者を笑顔に 震災原点のNGO、野菜を提供 長期化見据え「寄り添い支援を」
2022/05/25 05:30
野菜を届ける吉椿雅道さん(右)と、避難してきた弟たちに代わって受け取ったマリアさん=神戸市内
ロシア軍のウクライナ侵攻から3カ月。戦闘の収束は見えず、兵庫県内では長期化を視野に避難者を支援する動きが広がっている。
関連ニュース
侵攻の長期化覚悟「働きたい」 ウクライナからの避難女性、通訳機を手にパート開始
神戸に暮らすウクライナ人女性、母国の家族気遣い眠れぬ日々「兄は戦いに参加するのでは」
広がるウクライナ避難者支援、その陰で… 失意の中、危険覚悟で日本を去った男性
神戸市兵庫区を拠点に、海外の被災地や紛争地を支援する非政府組織(NGO)「CODE(コード)海外災害援助市民センター」は、野菜を届ける活動を始めた。
阪神・淡路大震災の後、「困ったときはお互いさま」の理念を基に前身の団体が発足したのは1995年だ。
中国やアフガニスタンなど世界各地で活動してきた経験から、行政の支援が届きにくい外国人らを支えようと昨年6月、「MOTTAINAI(もったいない)やさい便」を展開。兵庫県丹波市の有機農家などから規格外の野菜を買い取って週2回ほど、神戸市内の子ども食堂やベトナム人留学生が集まる寺院に無償提供していた。この野菜をウクライナから避難してきた2組にも届け始めた。
うち1組は、同国リビウから3年前に神戸市に移り住んだマリアさん(27)の弟(25)と、弟と結婚予定の女性(20)。4月11日、日本に避難してきた。
ロシア軍が侵攻した2月24日、弟は仕事でポーランドにいた。ウクライナに戻り兵士になろうとしたが、マリアさんが「命を落としてしまう」と電話で説得。旅費を工面して日本に呼び寄せ、2人は兵庫県内で暮らし始めた。
野菜は旬のタマネギやニンニクなど。「インスタント食品ではなく、新鮮な野菜で栄養バランスを取って」とコードの吉椿雅道事務局長(54)。2人に代わって野菜を受け取ったマリアさんは「ウクライナでおじが農家をしていた。(ハーブの一種)フェンネルの香りで古里を思い出した」と笑顔を見せた。
マリアさんの弟ら2人は日本語も英語もできず、収入はない。困っているのは「言葉。スーパーでシャンプーも買えない」と訴えたという。マリアさんは6月、ポーランドに避難している母も日本に呼び寄せる予定で、今後の生活に不安を募らせる。
県によると、ウクライナから県内への避難者は、把握分だけで20組を数え、県は生活支援金などによる援助を打ち出している。
一方、ロシアでもプーチン政権の軍事侵攻に抗議して国外に脱出するロシア人がいるという。野菜はロシアからの避難者にも届ける考えだ。
吉椿さんは「ウクライナ語かロシア語が話せる通訳ボランティアがいればサポートしやすい。一人一人に寄り添いたい」と、協力者の広がりに期待する。
寄付や通訳の問い合わせはコードTEL078・578・7744
(上田勇紀)
【特集ページ】ウクライナ侵攻