川重子会社が冷凍機の検査不正、38年間1950件 顧客立ち合いでも計測器に細工
2022/06/07 21:57
オンライン会見に臨む川崎重工業の渡辺達也専務執行役員(右)と川重冷熱工業の森宏之新社長=7日午後、東京都内
川崎重工業(神戸市中央区)は7日、子会社の川重冷熱工業(大阪市)が、ビルなどの空調システム用に製造販売した冷凍機について、実際は測定していないデータを検査成績書類に記載するなどの不正行為があったと発表した。不正は1984年から今年3月までの38年間に1950件、計約3千台で行われていた。いずれも安全性に問題がないとしている。
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不正があったのは「吸収式冷凍機」で、冷房に必要な冷水の温度を下げる機械。ビルや商業施設の地下や屋上に設置されている。
同社は出荷前に行う検査で、顧客から冷房能力100%の試運転結果を求められた際などに、実際は90%程度の運転でとどめ、検査書類に架空のデータを記載。1950件の顧客に提出していた。このうち334件では顧客が検査に立ち会ったが、同社の担当者が計測器に細工を施し、冷房能力を100%で運転しているかのように装っていた。
86~2009年には、カタログや仕様書で、JISが定める性能に満たない製品を、準拠していると偽って記載し販売。不正競争防止法に抵触する恐れがあるという。現在6機種2944台が稼働している。
不正は昨年8月、顧客に提出した検査書類と社内試験結果の食い違いに担当社員が気付いて発覚。社内調査を続けてきた。
川重は7日、オンラインで会見を開き、川重冷熱の篠原進社長の同日付での解任を発表。設計部門にいた1993年ごろから不正を把握しながら、是正措置を取らなかった引責処分とした。会見で川重の渡辺達也専務執行役員は陳謝し、不正について「動機は不明だが、コンプライアンス意識がない中、前例踏襲的に偽りを続けていた」と述べた。
川重は弁護士でつくる特別調査委員会を設置。詳細調査と原因究明、是正措置をまとめ、半年での調査完了を目指す。再発防止に向け、グループ全体でコンプライアンスの違反を再点検し、徹底を図る。
川重冷熱は吸収式冷凍機の国内シェアが19%に上る。資本金は14億6050万円で、22年3月末の従業員数は529人。同年3月期の売上高は186億円。川重が昨年8月に完全子会社化した。(大島光貴)