炎上する車から母子4人を救出 破裂音繰り返し「一刻争う状況」 家族で連携、割れた窓から抱き上げる
2022/06/12 21:00
炎を上げて燃える乗用車=5月5日午後、淡路市尾崎の神戸淡路鳴門自動車道上り線(読者提供)
高速道路を走行中にタイヤがパンクし、道路脇ののり面に突っ込み出火した乗用車からけが人を救出したとして、兵庫県高砂市の会社員山田英輔さん(48)ら一家4人が、淡路広域消防事務組合(兵庫県洲本市)の感謝状を受けた。事故は淡路市内の神戸淡路鳴門自動車道で発生し、乗用車は救助完了後3分ほどで炎に包まれて全焼。炎が上がる車に近づき、中にいた4人を抱きかかえて助け出した山田さんは「一刻を争う状況で無我夢中だった」と振り返った。(笠原次郎)
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同組合の川上洋司消防長(57)らが5月31日、高砂市を訪問。英輔さんと妻めぐみさん(42)、高校3年の長女意寧(ここね)さん(18)、高校2年の長男臣之輔(じんのすけ)さん(16)の自宅前で感謝状を手渡し、「勇気ある行動と家族の連携で4人を救出できたのは素晴らしい」とたたえた。
事故は5月5日、ゴールデンウイーク中のこどもの日に発生。山田さんらは南あわじ市内を観光後、自宅へと車を走らせていた。午後1時半ごろ、淡路市尾崎の同自動車道上り線で、数百メートル先に白煙が上がっているのを発見。のり面に突っ込んだ車の窓から身を乗り出した女性(38)=大阪市=が手を振って助けを求めているのに気づき、路肩に車を止めた。
英輔さんと臣之輔さんが出火した車に近づくと、車内に女性と3人の子どもが閉じ込められていた。後部ドアの窓が割れており、そこから女性が5歳の長男を差し出してきたので、英輔さんが抱き上げ、臣之輔さんに託して救出。同じように8歳次女、11歳長女も車から出し、最後に女性も助け出した。さらに4人を路肩の安全な位置まで避難させ、駆け付けた救急隊に引き継いだ。
救助中、車の部品が繰り返し破裂する音がし、火は周囲の木や山にも燃え広がっていた。事故車から離れた場所でめぐみさんとともに救助した子どもたちを介抱していた意寧さんは、車に近づく父と弟を見て「けがをするんじゃないかと気が気でなかった」と振り返る。
女性と長女は骨折する重傷を負ったが、ほかの子ども2人は軽傷だった。女性は助け出された3人の子どもに寄り添うと、少し安心した様子だったという。
夢中で子どもたちを運んだ臣之輔さんは「4人とも救出した後、怖さがじわりと襲ってきた」と話した。救助完了直後には、車の部品が爆発音とともに上空へ飛んでいったといい、めぐみさんは「火の中に突っ込んでいった夫と息子が、けがをせずに4人を救出できて本当に良かった」と喜んでいた。
また、兵庫県警高速道路交通警察隊も6月7日、英輔さんと臣之輔さんに、県の善行賞「のじぎく賞」を伝達した。