W杯ブームはや遠く? ラグビーと女子サッカーの新リーグ、集客V字回復の秘策は

2022/06/28 11:50

WEリーグで優勝したINAC神戸のホームゲーム。観客増への地道な努力が続く=4月29日、神戸市兵庫区御崎町1

 ラグビーのリーグワンと、サッカー女子のWEリーグ。ともに新リーグとして発足し、5月に1季目を終えたが、集客面では目標に届かなかった。日本代表の活躍で一度はブームが起こった両競技。新型コロナウイルスの影響もある中、人はどうしたら「見に行こう」と腰を上げるのか。ファン心理に詳しい関西国際大学の広沢俊宗教授(65)に聞いた。 関連ニュース 「まさか澤さんからパスが…」澤穂希、宮間あや、播戸竜二ら代表戦に合わせイベントに登場 神戸 チアの世界最高峰、NBAで躍動 スキル、言葉の壁越え INAC神戸、新監督にJ1神戸OBの朴康造氏就任「攻守共に躍動できるサッカー目指す」

(有島弘記)
 両リーグの今季の観客数は苦戦した。リーグワンは将来目標を1試合平均1万5千人としているが、1部12チームの平均は4213人で、コベルコ神戸スティーラーズ(旧神戸製鋼)は4721人。2019年のワールドカップ(W杯)日本大会で日本が初の8強に進出した翌年は1開催(複数試合を含む)平均で1万1千人を超えていたことを考えれば、寂しい数字だ。
 一方のWEリーグは平均5千人の目標に対し、初代女王に輝いたINAC神戸で3158人。リーグトップの数字ではあるが、日本が女子W杯ドイツ大会で初優勝した11年、INACだけでなでしこリーグに2万人を集めたことがある。危機感を抱く関係者は多い。
 これらの数字を踏まえ、広沢教授に質問をぶつけた。

「20代、30代の女性つかめ」「勝利プラス仕掛けを」
 -リーグワン、WEリーグとも集客に苦戦した。見に来てもらうにはどうすればいいのか。
 「お金を出すハードルで言えば、価格設定。テレビ通販も『最初は半額』など、いろいろとやっている。価格のみではないが、値段はきっかけとして大きい。その上で『また来たい』と思わせる装置があるかどうか。マーケティングの教授に聞けば、それを逃した場合、戻って来てもらうコストは3倍かかる」
 -ターゲットを決めることは大切か。
 「プロ野球広島の『カープ女子』が成功しましたよね。本拠地のマツダスタジアムで寝転びながら試合を見られるとか、子どもの大型遊具があるとか、いろんな仕掛けで集客した。ユニホームなど赤色で身を染める満足感もあったと思う。消費者心理学では『女性をつかめ』とされ、カープ女子に限らず、人気を支えるのは20代、30代の女性ですよね」
 ファン目線
 -「勝てば来る」という考え方は正しいのか。
 「それは必要条件。強さ以外に仕掛けないといけない。昔のプロ野球は人気のセ、実力のパと言われたが、当時のパ・リーグはお客さんが少なかった」
 -交通の便の影響は。
 「あると思います。三木市にある本学も『陸の孤島』と言われたことがあったが、尼崎市、神戸市にキャンパスができた。大学業界も景気が悪くなれば、親御さんは『なるべく通えるところに』と考える。毎回毎回応援に行こうと思えば近い方がいい」
 -SNS(交流サイト)の時代。選手も積極的に発信するべきか。
 「選手の給料はファンが来て初めて払える。測定が難しいが、ファンを集めた選手の給料を上げる仕組みがあってもいいかもしれない。サッカーがうまいだけじゃいけないよ、ということ。試合でいいプレーをして勝つことは大前提」
 -リーグワンでは「NTTコミュニケーションズシャイニングアークス東京ベイ浦安」など、長すぎるチーム名が問題視された。
 「名前の影響は大きい。数字の話になるが、心理学の実験で簡単に記憶できるのは7桁と分かっている。携帯電話も090、080の続きをそのあたりで収めている。地域に密着する上で地域名は必要。企業名も入れたいのは分かるが、自チームだけじゃなく、リーグ全体で活性化し、利益を上げるスタンスが取れないと駄目だと思いますね」

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