躍進の陰、伸び悩み露呈 比例「野党第1党」の維新「受け皿になっただけ」 参議院選挙

2022/07/13 05:30

候補者の応援演説に駆け付けた日本維新の会社の松井一郎代表(左)=6月26日、尼崎市内

 参院選の比例票獲得で、立憲民主党を超える「野党第1党」になった日本維新の会。改選議席を倍増させ、兵庫選挙区(改選数3)では現職候補が唯一、65万票を得てトップ当選し、強さを見せつけた。ただ、重視した東京や京都などの選挙区は伸び悩み、全国政党化には課題を残した。盤石に見える兵庫でも、党の看板頼みから抜け出せない実態がある。 関連ニュース 〈参議院選挙当選者に聞く〉維新・片山大介氏 憲法改正「慎重な議論、丁寧な説明が必要」 自公の選挙協力に疲弊感「与党で2議席」達成も、漏れる不協和音兵庫選挙区の舞台裏 安倍元首相、神戸の演説詳報 「私が総理の時代はけっこう波が高かった」

 「永田町の常識を維新が変える」。公示後、初の選挙サンデーとなった6月26日、尼崎市内。維新の松井一郎代表(大阪市長)が政治改革を訴えると、数百人の聴衆から拍手が湧いた。
 今回、再選を果たした片山大介氏(55)への代表の応援は1度だけ。吉村洋文副代表(大阪府知事)の兵庫入りはなく、その後、片山氏の街頭演説で足を止める聴衆はまばらだった。
 昨秋の衆院選で勢いづく維新は、政権の「補完勢力」から決別。自民党や立民に批判の矛先を向け、憲法改正や防衛力の強化を前面に打ち出し、保守色を強めて選挙に臨んだ。
 片山氏の元には、自民などの支持団体から約20の推薦状が寄せられ、ある労働組合関連の団体幹部からは、個人的に支援すると連絡もあった。陣営幹部は「野党第1党を目指すとした方針が受け入れられている」と手応えを語っていた。
 結果は、改選数が3に増えた2016年以降で最多の65万票を獲得。神戸新聞の出口調査では自民支持層から約14%を取り込んだ。連立与党の公明党の候補に流れた票よりも多かった。
 それでも、投開票から一夜明けた片山氏は浮かない表情だった。「この結果は維新という看板があったから。なければ難しかった」
 維新の県内比例得票は、自民を抜いてトップだったが、選挙区とほぼ同じ約63万6千票。昨秋の衆院選からは14万票以上減っていた。
 候補者が乱立した事情もあるが、各地に後援組織を発足させ、地道な活動をしてきたとの自負があっただけに、「自分の活動の成果は得票の一部にすぎない」と悔しさをにじませた。
 「全国政党化」への足掛かりとしていた東京や京都選挙区で議席に届かず、松井代表は10日夜の会見で「負けを認めざるを得ない。われわれの足腰はまだ不十分だ」と総括した。
 県組織幹部は厳しい口調で戒める。「兵庫でもまだまだ活動量が少ない。他党の受け皿になっただけで、気を抜けばすぐに期待はしぼむ」(参院選取材班)

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