繁華街に戻った光景「違反です」 タクシーの客待ち車列、コロナ禍の打撃回復に躍起 三宮
2022/07/15 17:00
駐停車禁止スペースの客待ちでタクシーの一斉取り締まりを行う生田署員ら=5月18日夜、神戸市中央区三宮町1(画像の一部を加工しています)
交差点の道路脇に次々とタクシーの車列ができ、途切れない。新型コロナウイルス感染対策の飲食店に対する営業時間の短縮要請が段階的に解除され、神戸・三宮の繁華街に酔客らが繰り出し、タクシーが客待ちをする姿も戻ってきた。ただし、駐停車が認められない道路スペースでの違法客待ちも横行。見かねた兵庫県警は一斉取り締まりを始めた。(竜門和諒、領五菜月)
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「動くな」
5月18日夜、三宮センタープラザ北側の県道21号に声が響いた。様子をうかがっていた私服捜査員の合図で、生田署員らが一斉に客待ちタクシーの列を取り囲む。署員はチョークで手早くタイヤの位置を路面に記録。「違反です」と告げられた運転手はあっけにとられていた。
■県警9人を摘発
道路交通法では、交差点内だけでなく、横断歩道から5メートルの範囲の路上は駐停車禁止と定められている。
「(違反と)分かっているけど、お客さんを乗せやすいからしょうがない」。取り締まりで50代の男性運転手は吐き捨てるように話した。午後8時以降の約1時間半で9人のタクシー運転手が駐停車禁止違反で摘発され、点数2点、反則金1万2千円の反則切符(青切符)が切られた。
神戸市内で営業するタクシー会社の担当者によると、コロナ禍前はドライバー1人当たり平均で1日3万~4万円程度を売り上げたが、緊急事態宣言の期間中などは2割程度にまで落ち込んだ。感染拡大で2年半に及んだ苦境。現在はコロナ禍前の水準に戻りつつあり、会社、運転手とも「これまでのマイナスを取り戻そうと頑張っている」という。
一方で、早帰りの習慣がつき、深夜の利用は減ったという懸念もある。県警に反則切符を切られた別の男性運転手も、コロナ禍で一時、売り上げが3分の1まで減り、乗客の回転率を上げようと躍起だった。「1日の売り上げは1万円もいかない」。取り締まりに弱々しくため息をついた。
■事故誘発の恐れ
なぜタクシーの違法駐車はなくならないのか。原因の一つに、路上の客待ちスペースがほとんどないことが挙げられる。
三宮の繁華街周辺では、県公安委員会が客待ちのために夜間の路上駐車を認めているのは、JR三ノ宮駅の南北にあるロータリーに隣接する部分を除くと、ほかに2カ所しかない。この2カ所を合わせても計20台程度しか止まれない。
反則切符を切られた60代の男性運転手は「(駐停車できる)路上とロータリーはいつもいっぱいで、なかなか順番が来ない。これまで取り締まりも聞かなかったので、黙認されていると思っていた」と話す。
違法客待ちについて、県タクシー協会の担当者も「待機場所が少ないため路上に止まるタクシーが確かにおり、マナーが悪いと言われてしまっている」と問題視。協会として、加盟する業者に交通ルールを守るよう呼びかけた。
生田署には、タクシーに限らず、乗用車の違法駐車の通報が連日寄せられている。同署の梶原修作交通課長は「交差点内の駐車は視界を遮り、事故を誘発するので危険」と呼びかけ、当面の間は取り締まりを続けるとしている。