デリケートな痔の悩み解決します 肛門科開設200年、独自手術で痛みや再発とお別れを
2022/07/29 14:00
診察室で肛門鏡を持つ木村泰之院長(左)=姫路市南八代町
痔(ぢ)や便秘、下痢など誰にも相談しづらいお尻のトラブルに困っていませんか。江戸時代から300年以上続く歴史があり、年間約600件の手術を手がける全国でも有数の肛門疾患の専門病院が兵庫県姫路市南八代町にある「木村病院」です。アットホームな雰囲気で、同じ悩みを抱える入院患者さん同士が『おしり合い』になって退院していくとの評判を聞きつけ、最近お腹を下す日が多い男性記者(33)がお邪魔してきました。(井上 駿)
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【図解】肛門の三大疾患
安易な気持ちで、体内に異物を入れるのはとても危険
初代が1687年に志方村(現在の兵庫県加古川市)で医業を開き、5代目が、全身麻酔を世界で初めて成功させたとされる外科医の華岡青洲に学んで1808年に肛門科を開設した。1958年に現在の場所に移転し、2013年に11代目の木村泰之さん(48)が院長に就任。専門医2人のほか、看護師ら計約50人のスタッフが勤務し、県内外から患者が訪れるという。
3人に1人が悩みを抱えているとされ、国民病の一つにも数えられる「痔」。三大疾患は、「いぼ痔(痔核)」「切れ痔(裂肛(れっこう))」「痔ろう(あな痔)」で、いずれも再発が多いのが特徴という。
初診では、まず診察台に寝転がり、肛門鏡を使って患部の画像をモニターに映し出し、専門医が丁寧に患部の状態を説明する。女性看護師は「最初はみんな不安で恥ずかしがるものです。声かけをして、リラックスしてもらうことを心がけています」と話している。
進行したいぼ痔は、痔核の組織を的確に切除しないと再発のリスクが高まるという。手術では痔核に注射をする「アルタ療法」と、超音波メスによる患部の切除を組み合わせるが、木村院長は約6千件の手術経験から、表面の粘膜を残しつつ患部を切除して体の負担を減らす独自の手法を編み出している。
手術を受けた場合、約2週間の入院が必要で院内にはリハビリ室もある。
木村院長は「新型コロナウイルス禍で家にこもりがちになり、運動不足が重なって症状を悪化させる人が増えている」と分析。「痛みがなく、再発しない手術を目指します」としている。
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取材のついでに、記者自身の「お尻のトラブル」について聞いてみた。お酒を飲んだ次の日は、おなかを壊すことが多いと伝えると、木村院長は「アルコールは消化に悪影響。量を減らすのが一番いいですね」と即答だった。
「便秘だけでなく下痢も痔の原因にもなるんですよ」と木村院長。下痢で便の小さな粒が勢いよく出ることで、肛門が傷つきやすくなるという。
便秘や下痢の予防は、アルコールや香辛料などの刺激物は控えめにし、食物繊維や発酵食品を多く摂取するなど生活習慣の改善が基本。長時間同じ姿勢を続けず、血流をよくするために毎日お風呂につかるのも大切という。ストレスが原因でおなかを壊す「過敏性腸症候群」の患者も増えているといい、服薬で改善するケースが多いという。
同院では、便秘・下痢外来も設けており、木村院長は「軽い悩みでもまずは相談してほしい」としている。木村病院TEL079・296・1115
【肛門の三大疾患】いぼ痔は、排便時のいきみや便秘などで肛門に強い負荷がかかったり、長時間の座りっぱなしなどで血流が悪くなったりして、毛細血管のこぶができる疾患のこと。肛門と直腸の境目より奥にできるものは内痔核、境目より下部にできるものは外痔核と呼ばれるが、併発したり連続している場合が多い。切れ痔は、硬い便や下痢で肛門付近の皮膚が切れた状態。痔ろうは下痢などによって細菌が入り込んで肛門付近が化膿(かのう)し、うみの排出後にトンネル状の組織が残ってしまう症状を指す。
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■「もっと早く…」相談できず症状を悪化させる患者も
デリケートな部分の悩みで誰にも相談できず、痛みや出血がひどくなってから来院する患者が多いといい、「もっと早く受診すればよかった」との声も多いという。木村病院には女性患者も多いのが特徴で、入院中に仲良くなったという女性3人に話を聞いた。
切れ痔といぼ痔の治療をした60代の女性は2月に便秘と下痢を繰り返すようになり、お尻にものが挟まったような違和感が出たという。座ると痛みが出て患部を切除する手術を受けた。
30代の女性は、出産時に強くいきんだ際にいぼ痔を患った。内痔核だったため当初はさほど痛みがなく、8年ほど治療を受けていなかったが、肛門から患部が顔を出すようになり、腫れて歩けないほどの痛みが出たため、手術を決めたという。
いぼ痔と痔ろうを患った40代女性は、「症状があるのは自分自身では分かっていたが、なかなか人には相談しにくくて、症状も軽かったので最初は放置していた」と打ち明ける。座れない位の痛みが出て、知人から評判を聞きつけて、手術を決めたという。
3人は「同じ悩みを分かち合えるので心強かった」と口をそろえた。