「生理休暇」取得率1%なぜ低い 国の最新調査 労組アンケ、職場の理解「ない」6割

2022/09/13 20:20

生理休暇についてのアンケートを実施した郵政産業労働者ユニオンの有村三津さん=神戸市内

 「生理休暇」の取得率が年々減っている。制度は法で定められ、働く女性が増えているにもかかわらず、国の最新の調査で1%を割り込んだ。「言いにくい」「人手不足で休めない」など、その背景を探れば、女性が声を上げづらい職場の課題が浮かび上がる。生理の問題をタブー視せず、アンケートの実施や生理ケアへの取り組みで職場環境の変化を促す動きも出ている。(小谷千穂) 関連ニュース 生理中のお風呂上がりの問題、ナプキン補助用品で解決 「あったらいいな」の声に応え開発 ピル服薬支援、企業で広がる 生理のつらさ和らげて女性が働きやすい環境へ 阪急の駅に「ティッシュ自販機」がある不思議 トイレットペーパー完備なのに…どうして今も稼働しているの?

 日本郵政グループの正社員や非正規社員でつくる「郵政産業労働者ユニオン」は今年3月、生理休暇についてアンケートを行った。中心となったのは神戸中央郵便局(神戸市中央区)で働く同ユニオンの女性部長、有村三津さん。135人から回答を得た。うち非正規社員が7割いた。
 生理中に働く苦労を尋ねたところ、「痛みがひどく薬でも抑えられない」「長時間の立ち仕事が苦痛」「貧血で、バイクを運転中に倒れそうになった」などの体験が寄せられた。
 しかし、休暇取得について職場の理解は「ない」が6割。「生理休暇だと言いづらい」「人員が少なく、休みにくい」「休むと給料が減る」「評価が下がる」などの声が上がった。
 生理休暇は戦後、労働基準法に盛り込まれた。1965年の厚生労働省調査によれば、女性労働者の4人に1人以上が取得。ところが85年には9・2%に下がり、最新の20年では0・9%まで落ち込んでいる。
 医薬品や生理用品が改良された一方、女性の社会進出が進み、職業の性差がなくなりつつある中で、逆に女性だけを対象とした休暇が取りづらくなったとの指摘もある。女性の労働力人口は21年平均で3057万人。10年前より約300万人も増えた。兵庫県内の労働組合でも生理休暇に関する相談が寄せられる。
 有村さんらが行ったアンケートでは、取得を進めるための方策として「女性の管理職を増やす」「会社が積極的に周知する」などの要望が上がった。
 新型コロナウイルス禍では、経済的に生理用品の購入が難しいこと、生理への理解が進んでいないことを指す言葉「生理の貧困」が注目された。有村さんは「周囲の理解を深めるためにも管理職や男性社員への研修を進めるべき」と指摘。「生理についてオープンに語れるようになりつつある今だからこそ、職場でも話しやすい雰囲気をつくってほしい」と話す。
【生理休暇】1947年制定の労働基準法で定められた。腹痛や頭痛、倦怠(けんたい)感など生理前や生理中の体調不良によって、仕事に著しく支障が出る場合に請求できる。人によって程度が異なるため、就業規則で日数や業種を限定できない。日単位だけでなく半日や時間ごとの取得もできる。2020年に厚生労働省が行った調査によると、生理休暇中の賃金を「有給」としている事業所の割合は29・0%。
■体のケアをしながら働ける職場づくりを
 生理休暇の取得率が少なすぎることに、婦人科の医師も危機感を抱く。川口レディースクリニック(神戸市灘区)の川口恵子院長は女性の健康を守るという観点から、体のケアをしながら働ける職場づくりを求める。
 近年、キャリア重視や晩婚化など女性のライフスタイルが変化。川口さんによれば、出産回数が減り、生涯の生理の回数が増えることで子宮内膜症にかかるリスクが高まると考えられるという。またストレスで生理痛がひどくなる例も。生理前のイライラなど精神的不調は接客にも影響する。
 川口さんは生理休暇はストレス解消にも効果があると指摘。「薬や習慣で治ることも多い。我慢をせず、治療しながら活躍する道も考えてほしい」と気軽に医療機関を受診するよう呼びかける。
 一方、女性社員向けに福利厚生として生理ケアを充実させる企業も出てきた。ヘルスケア関連企業「LIFEM」(東京)は生理の悩みをオンライン診療で受け付けたり、セミナーを開いたりする法人向けサービス「ルナルナ オフィス」を提供。総合商社の丸紅や化粧品メーカーのポーラ・オルビスホールディングスなどが導入している。

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