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松本由紀子医師が語る生理の話に聞き入る社員ら=神戸市中央区山本通2、メディセオ
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松本由紀子医師が語る生理の話に聞き入る社員ら=神戸市中央区山本通2、メディセオ
婦人科・松本由紀子医師
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婦人科・松本由紀子医師

 女性の働きやすい環境づくりを進めるため、生理をコントロールするピルの服薬支援制度を導入する企業が増えている。処方に必要な婦人科への受診費用や薬代を企業が負担。生理前の不快な症状や生理痛などのつらさを緩和し、仕事の能率を上げるのがねらいだ。同時に、男性社員にも女性のからだについて理解を促す取り組みも広まっている。(小尾絵生)

 製薬会社バイエル薬品(大阪市)の調査では、生理に伴う症状で、欠勤や労働量・質が低下することによる日本の年間労働損失は4911億円に上ると試算している。

 多くの企業で生理休暇制度は導入されているが、現実的には休みづらいことや身体的なつらさの解消にはならないなど、「利用しづらい」という声は根強い。新たな選択肢として、2020年ごろからピルの服薬支援制度を導入する企業が出てきた。

 低用量ピルは、生理痛の緩和▽出血量の抑制▽生理前の気分の落ち込みやイライラの軽減▽生理日の調整-などが期待できる。月経困難症であれば、処方に保険が適応される。

 医薬品卸大手のメディパルホールディングス(東京)などは、月経困難症など生理に伴う不快症状をピルで解決するプロジェクト「シフトP」を立ち上げ、社員の意識改革に取り組む。グループ企業15社と共に、今年4月からピルの服薬支援制度を本格導入した。

 希望者はオンラインで婦人科を受診し、郵送でピルを受け取ることができる。婦人科系の疾患が見つかった利用者もいるという。同社は「男性社員の意識改革も重要。社会全体の問題として波及してほしい」と力を込める。

 6月中旬には、グループ会社のメディセオ(東京)で、兵庫県内の営業職らを対象に研修を実施。神戸市内で婦人科クリニックを開く松本由紀子医師(46)が講演した。オンラインを含む受講者約200人の大半は男性だ。

 松本医師は生理の仕組みや生理に伴う不快症状に悩む女性の実態、ピルの効能などを解説。「女性活躍を考えるには生理の問題は避けて通れない。オープンに話ができる環境をつくってほしい」と呼びかけた。

 同社では近年、女性の営業職も増えてきたが、管理職を含めて男性が多数派。男性管理職らはハラスメント意識の高まりもあり、女性社員への接し方に戸惑うこともあったという。

 受講した同社神戸営業部の西川純司部長(50)は「生理について詳しく知る機会もなく、女性のつらさを想像することもなかった。全員で意識共有できた意義は大きい」。また同営業部の藤井麻有さん(28)も「男性社会だった会社が一歩前進したと感じる。ピルの正しい知識に触れられ、必要になった時には使ってみようと思えた」と話した。

■女性の性 タブー視しないで 婦人科・松本由紀子医師の話

 女性の社会進出が進む中、生理に関する悩みを抱える女性は多い。生理が重いほど労働生産性が低下するという調査結果もある。ピルはその解決策の一つになる。

 男性は女性社員が生理に関してどんな大変さや悩みを抱えているのか、尋ねることさえできずにいる。女性がより活躍できる社会にするために、女性の性を必要以上にタブー視している現状を変える必要がある。

 ピルは生理痛や月経前症候群、月経前不快気分障害などを軽減、解消してくれる。一方、避妊薬のイメージや副作用の心配など、漠然とした不安から敬遠されがちだ。正しい知識を持ち、体調管理の一環で使われるという認識が広まればと思う。

 生理について、男性だけでなく女性自身も実は知らないことが多い。婦人科医として、企業などで話をする機会が増えればと思う。

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