石綿被害の記録誤廃棄 父亡くした男性が国提訴「立証の機会奪われた」 神戸地裁
2022/09/15 19:57
加古川労働基準監督署による文書廃棄について説明する谷真介弁護士ら=15日午後、神戸市中央区多聞通2
アスベスト(石綿)の被害を裏付ける関連文書を加古川労働基準監督署が誤廃棄した責任を問うため、父親を中皮腫で亡くした兵庫県三木市の男性(47)が15日、国に約300万円の賠償を求めて神戸地裁に提訴した。男性は別訴訟で石綿被害に関する責任を建材メーカーと争っており、男性の代理人弁護士は「労災記録などの文書は原因究明に重要な資料。被害や責任の立証手段が失われ、取り返しのつかない問題だ」と話した。
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訴状などによると、男性の父親は鉄工所を経営し、建築現場で建材などから飛散した石綿を吸い込んだ。中皮腫を発症し、2003年に54歳で亡くなった。
08年に加古川労基署は男性の父親を労災認定したが、その後、聴取記録などの書類を誤って廃棄。男性は労災記録の情報開示請求をした際に、父親に関する資料の廃棄を把握したという。男性は今年3月、石綿吸引に関する責任を巡って神戸市の建材メーカーを提訴しており、「(被害を)立証する機会を奪われた」などと主張している。
国は05年、石綿関連文書の保存を各労働局に通達したが、15年の厚生労働省調査では全国で約6万4千件の廃棄が確認されていた。
男性は「廃棄してはいけない記録まで廃棄するなんて許すことはできない」とコメント。厚労省は「関係各所と対応を相談したい」とした。