国葬どう見た 「一人黙とう」「反対する国民の声を無視」「残念で、残念で…。残念だ」「きっちり検証」

2022/09/27 20:05

足を止め、安倍氏国葬のテレビ中継を見守る通行人=27日午後、神戸市中央区琴ノ緒町5

 27日に行われた安倍晋三元首相の国葬。兵庫県では県庁などに半旗が掲げられたが、「弔意を強制しない」という政府方針もあって、それ以外は普段通り。賛否の声が渦巻く中、首相経験者としては55年ぶりとなった国葬を人々はどう見たのか。 関連ニュース 旧統一教会「目的は『正体隠し』」名称変更の背景と政治家に与えたもの 前川喜平さんに聞く 【写真】安倍晋三元首相の国葬に合わせ、街頭で繰り広げられた抗議集会 【写真】安倍晋三元首相のポスターが掲げられた一室で黙とうをささげる自民党兵庫県支部連合会の職員ら

 ■今日は国葬か…
 午前8時半。神戸市中央区のJR元町駅はいつもと変わらない通勤風景。街頭インタビューを行うテレビクルーの様子を見て「そうか、今日は国葬か」と口にする人もいた。
 男性会社員(56)は「ニュースで国葬の日だと認識しているが、特に意識せず普段通り仕事をするつもりです。夜に家で無事終わったか、テレビで確認するくらいですかね」。国葬開催については「そんなに反対することなのか」とも。
 兵庫県庁ではこの日午前8時ごろ、警備員によって半旗が掲げられた。
 ■無事に開催されれば
 神戸市灘区の阪急六甲駅前。近くにある神戸大は夏季休暇中だが、海事科学部3年の女子学生(21)はラクロス部の練習に出るため朝からバス停に並んだ。
 「物心ついたころからほとんど『総理大臣=安倍さん』だったので、ああいう形で亡くなられたのはショックでした」
 部活の練習は正午ごろまでで、午後はオンラインで企業の面談を受ける予定。「家では国葬のことは特に話題に上らず、今日行われることもSNSで知った。無事に開催されればいいなとは思うけど、就職活動は動かせない」と話した。
 ■国民の声を無視
 午後1時。神戸・三宮で抗議集会が始まった。「税金の無駄使い」「反対する国民の声を無視して今まさに開催されている」。約80人がプラカードを持って歩道に並び、約2時間、「国葬反対」の声を響かせた。
 主催団体の男性(75)は「国葬は開かれたが、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関係など安倍さんに関わる問題が終わったわけではない。追及を続けないと、この国に明るい未来はない」。
 抗議ビラを受け取った神戸大1年の女子学生(20)は、国葬について「知らないことばかりなので意見はできない」。一方で「目をそらしてはいけないような気がしてビラをもらった。今日をきっかけに世の中について一度考えてみます」と話した。
 ■残念、その一言
 神戸市中央区にある自民党兵庫県連の事務所では、職員ら8人が国葬のテレビ中継を見守った。
 午後2時、国葬の開始に合わせて、事務所内の一室で整列。安倍氏の遺骨が式壇に置かれる様子をじっと見つめ、画面の向こうの参列者たちと同時に1分間の黙とうをささげた。
 直前に降り始めた雨音だけが、しとしとと室内に響く。ゆっくりと顔を上げた岸本真人事務局長は「残念で、残念で…。残念だ。その一言に尽きる」と、言葉少なに自席へ戻った。
 ■一人で黙とう
 養父市の女性(73)は所用のため大阪市へ。午後2時前、立ち寄り先で一人、黙とうした。「長期間、日本のトップとして引っ張ってこられた。外交が特に素晴らしかった」と評価。安倍氏が首相在任中に同市が国家戦略特区に指定されたこともあり、「(地域の活性化で)力になってくれた」と感謝の言葉を述べた。
 ■きっちり検証を
 午後3時前、神戸・三宮の「ミント神戸」近く。交差点前の街頭モニターに追悼の辞を述べる菅義偉前首相が映し出されると、通行人がぽつぽつと足を止めて耳を傾けた。
 焼き鳥屋で安倍氏本人に総裁選への再出馬を口説いたことを「生涯最大の達成」と振り返った菅氏。モニターを見ていたアルバイトの男性(66)は「開催のプロセスが問題山積で、個人的にはきのうまで『国民葬でいいのでは』と思っていたが、菅さんのあいさつは胸に迫るものがあった」と言う。
 「せっかく国葬という形にしたのだから、きょうは故人を悼もうという気持ちにはなった。何が良くて何がいけなかったのか、きっちり検証して未来に生かしてほしい」
 ■姫路で
 午後3時半。姫路城周辺では観光客や下校中の中高生らが行き交った。
 姫路城を訪れた丹波市の50代男性は「国葬の賛否はともかく外国から多くの弔問があったことで、外交の効果が見えた」、そう実感したという。神奈川県から夫と訪れた70代女性は旧統一教会と政治家との関係を指摘。「莫大な警備費も発生した。国葬ではなく、自民党が実施するなどしてほしかった」と批判した。
 姫路駅前の商店街では、入り口に弔旗を掲げた雑貨店も。店主の70代男性は国葬の様子をテレビで見ていたといい、「外交など安倍さんの功績をたたえたい。静かな気持ちで過ごしている」と話した。
 ■夜の街
 日が暮れた神戸・三宮の繁華街。仕事帰りの人たちが飲食店へ繰り出した。
 ある居酒屋はほぼ満席。話題の中心はプロ野球・阪神の監督人事だった。女性従業員(58)は「国葬には賛成で、デジタル献花もした。日がたっているし、外食まで控えさすような弔意強制はしなくてよかった」と、忙しそうに注文を聞いて回っていた。(井上太郎、竜門和諒、丸山桃奈、安藤真子)

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