スリランカ「破産」、神戸の留学生も困窮 学費支援断たれバイト多忙「悲しみと怒りと」
2022/09/30 16:26
アルバイトで学費を稼ぎ、国際文化を学ぶスリランカ出身のマリンディ・リヤナゲさん。スマートフォンの写真を見ながら家族の思い出を話し始めると、顔がほころんだ=神戸市北区
深刻な経済危機に見舞われるスリランカ。前大統領が「国家破産」を表明して国外に逃れる混迷の事態に、日本にいる同国出身者は不安を募らせる。神戸市内の大学に留学中のマリンディ・リヤナゲさん(23)もその一人で、国が学費を負担する約束をほごにされ、アルバイトを増やして生活をつないでいる。母国の大学で日本語を教える夢を抱いていたが、日本での就職を考え始めた。
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主食の米は1キロ80円から300円に急騰した。バス代は10円から40円、ガスボンベは1本800円が4千円に…。リヤナゲさんが、スリランカの物価高を日本円に換算して説明する。
日常生活に必要なあらゆる物品が手に入りづらい。「悲しみと同時に、怒りがこみあげてくる」。一変した母国の現状に、語気を強める。
リヤナゲさんは、スリランカ南部のラトナプラ出身。ドラマ「おしん」を見て日本の風景に憧れ、高校で日本語を学んだ。2019年4月に来日し、神戸市内の日本語学校を経て昨年4月、神戸親和女子大(神戸市北区)に入学した。
大学では国際文化を学んでいる。しかし、日本語学校在籍時は国が負担してくれていた学費が届かなくなった。食品会社でのアルバイトを大幅に増やし、平日はほぼ毎日、夜のシフトに入っている。
この春以降、実家の暮らしも激変した。両親が営んでいた紅茶の畑は、化学肥料の輸入が途絶えて一時閉鎖に追い込まれた。都市ではガスが手に入りづらく、原始的な生活様式の田舎に引っ越したという。
リヤナゲさんが話す。「しんどいけれど、日本では勉強ができるし、働いてお金をもらうこともできる。私はラッキーなのかな」
今年8月初め、新型コロナウイルス禍もあって戻れなかった母国に、約3年半ぶりに帰った。ラトナプラは、レストランが閉まり、学校の授業も週5日から週3日に減っていた。
国内を巡るつもりだったが、ガソリンが高騰しており家で過ごした。現地では輸入品が出回るなど、日常生活は少しずつ改善しているという。ただ、リヤナゲさんの将来について両親は「日本で就職した方がいい」と口をそろえた。
8月末に日本に戻り、不自由なく過ごせるありがたみを実感しているというリヤナゲさん。「今のスリランカは、率直に言って自分がいるべき場所ではない。私が暮らしていた頃の穏やかな状態に早く戻ってほしい」と願っている。(小川 晶)
【スリランカと経済危機】インドの南東に位置する島国で、紅茶の栽培などが盛ん。面積は北海道の0・8倍程度で、人口は約2200万人。経済危機の主要因はインフラ整備に伴う対外債務の膨張とされ、コロナ禍による観光客激減やロシアのウクライナ侵攻による燃料費高騰が重なり、生活必需品の輸入が滞った。国内では一族支配への不満が高まり、今年3月以降、抗議デモが活発化。7月、前大統領が議会演説で「国家破産」を表明すると、最大都市コロンボでデモ隊の一部が公邸を占拠した。前大統領はモルディブに脱出し、辞任した。