神戸中華同文学校、華僑教育支え120年 鳳蘭さんら輩出…戦禍、震災越え「中日友好の架け橋に」

2022/10/07 20:05

神戸中華同文学校の授業。全て中国語で行っている=神戸市中央区中山手通6

 国内に5校しかない中華学校の一つが、神戸にある。神戸中華同文学校(神戸市中央区)は、華僑の子どもらを教育する機関として120年余りの歴史をつなぎ、日本とルーツの中国について理解を深めている。第2次世界大戦や阪神・淡路大震災などを経験し、日本人の卒業生も少なくない。OBの李俊吉校長(54)は日中国交正常化50年の節目に「中日友好の架け橋として活躍する人材を輩出してきた」と胸を張る。 関連ニュース 舞う獅子舞、生き生きと 神戸・南京町の「中秋節」3年ぶりに観客前で 日中友好は華僑の希望 戦後の断絶期経験、現状憂う 神戸の互助団体・石さん親子 国交正常化50年 【写真】神戸中華同文学校の授業。全て中国語で行っている

 運動場に太鼓と銅鑼の音が響き、長い体をダイナミックにくねらせていた龍が、とぐろを巻くポーズを取った。運動会が迫った9月中旬、同校の中学生が中国の伝統舞踊「舞龍」の練習に汗を流していた。
 「日本の一般の義務教育内容に加えて中国の歴史、文化を身に着ける」と李校長。調理実習ではチンジャオロースなどの料理、美術では中国伝統の画法「工筆画」などに取り組む。
 インターナショナルスクールと同様の「各種学校」に位置付けられ、授業は日本語を習得する「国語」を除いて原則として中国語で行う。検定教科書の内容を中国語で編集した独自の教科書を使い、「中国地理」「中国歴史」などの科目も学んでいる。
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 同校は1899年に前身の学校が創立された。翌1900年には神戸・トアロード近くに洋風の木造新校舎を建設し、後に首相となる犬養毅を名誉校長に迎えた。
 39年に他の華僑学校と合併して現在の校名に。45年6月の神戸大空襲では校舎が焼失したため、神戸市にかけ合い、市内の別の公立小学校を間借りして授業を再開した。
 阪神・淡路大震災では、校舎を避難所として開放し、住民が身を寄せた。李校長は「教員は炊き出しや支援物資の配給を手伝い、地域と学校が復興に向けて団結した」と振り返る。
 記録が残る戦後だけで約6500人が卒業し、宝塚歌劇団元星組トップスターの鳳蘭さんや俳優の野村周平さんらが名を連ねる。
 49年卒業の林麗韞さんは、同校で教えた後、中国で共産党の要職を歴任した。72年の日中国交正常化の際は、田中角栄、周恩来両首相の交渉の通訳として歴史的一幕に立ち会った。
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 直木賞作家の故陳舜臣さんや神戸華僑総会名誉会長だった故林同春さんらも同校の運営に関わった。多くの神戸華僑の母校として、コミュニティー形成の中心的な役割を果たし、地域の発展に一役買う。
 生徒の多くは日本語で育ち、中国語で学び、英語教育も受ける。国内の華僑学校は神戸、東京、横浜、大阪に計5校しかない。
 神戸では小中一貫校として小学1年~中学3年の約650人が学ぶ。約半数は卒業生の子どもが占めるが、「中国語をマスターさせたい」と希望する日本人の親もいるという。
 李校長は「これからはトリリンガルが求められる。中日間に限らず、国際社会に羽ばたく人材を育成したい」と意気込む。(竜門和諒)

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