男性版の産休制度、「手伝う」ではなく「協力」を 専門家「家族のチーム力を上げて」

2022/10/08 14:20

「家事の経験が仕事に生きることもある」と話す野間和美さん=三田市天神1

 父親が育児休業を取りやすくするための改正育児・介護休業法が4月から段階的に施行されている。今月、新たに「産後パパ育休(男性版産休)」の制度も始まった。ともに子育て、家事、仕事をする「トモダテ」の普及に取り組む野間和美さん(53)=兵庫県三田市=は、法改正を前向きにとらえつつ、家族で家事、育児について考える機会にしてほしいと訴える。「本当に大切なのは家族のチーム力を上げること」(喜田美咲) 関連ニュース 「産後パパ育休」制度スタート 「男性の育休100%」宣言の会社、離職減り新卒採用にも効果 灘高教諭、娘を抱いて授業 働き方の「リアル」生徒と考える 新必修科目「公共」先取り 育児のキラキラとドロドロ、夫と分かち合いたいのは…? 妻が孤独を深める理由を解説した投稿が話題


 産後パパ育休は、出産後8週間以内に夫が計4週分の休みを取ることができる新制度。育児休業給付金の受け取りや社会保険料の免除などで、実質的に賃金の最大8割が保障される仕組みだ。
 野間さんは仕事と家事の充実を推進する「ワーク・ライフ・インテグレーション協会」の関西統括マネジャーを務める。今年の夏ごろからは「トモダテ・トレーナー」として活動。共働き世帯を中心に講演会などを開いている。
 きっかけは、育児中に気付いた「男女はこうあるべき」という固定観念。結婚した後、出産、育児に専念するため、勤務していたパソコン教室をやめていた。たまたま聞いた講演で、仕事や家事分担のほか、ランドセルの色一つにも男女差があり、自分の中にも刷り込みがあることを知った。育児が落ち着いた頃に整理収納アドバイザーの資格を取得。その後、同協会に所属している。
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 これまで講演をする中で、何人かの男性から聞いたのが「育休を取ってみたけれど、何も役に立てなかった」という声。休める仕組みがあっても生かせない「取るだけ育休」に悩む男性が少なくないと感じた。
 少し前までは、育児に「参加」する男性を増やすことが課題だった。社会の意識は少しずつ変化し、育休を取る男性も増えてきた。そこで生じてきたのが男女の意識のずれ。講演では夫が家事、育児を受け身で「手伝う」のではなく、夫妻が同じ気持ちで「協力」し合うことが大切と強調する。
 その前提として男性に伝えるのが、出産後に起きる女性の体の変化。女性ホルモンの変化や、産後うつになりやすい時期、割合をデータを使って紹介。仕組みが理解できれば、相手の心や行動の変化の理由が分かり、必要なサポートを考えられるようになるという。
 実践として、家庭ごみを出す際に各部屋備え付けのごみ箱の袋を入れ替える▽1週間分の食料や日用品を買い出す際に冷蔵庫などにストックがどれだけあったか把握する-など数々の「名も無き家事」についてもクイズ形式で説明。さらに「育児が重なったらどうなるか」「先回りできることはないか」などを想定してもらう。
 勤め先の関係で長期の休暇は取れないといった意見にも、「3日休めたら『価値のある3日』にする準備ができていればいい」。例えばコロナ禍で片方の親が感染して身動きが取れなくなっても、子どもの着替え、学校の準備など、パートナーが分かっていれば心強い。
 今年8月には、出産予定があったり、出産を望んだりする男女を対象に、家族で子育てや家事を楽しみながら暮らす方法を話す準備をした。しかし参加者が集まらず、開けなかった。野間さんは「法改正が進んでいる時期だからこそ、もっと関心があってほしかった」としつつ、「家事をシェアと言われると聞きたくないという人もいるかもしれないが、家庭が充実したら仕事にも生かせることがある。家族で一緒に考える機会づくりをサポートしていきたい」と話している。講演の依頼などは野間さんTEL090・5640・5797。メールはoutijikan@gmail.com

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