震災「遺物」に触れ、防災に思いはせて 缶詰、水のいらないシャンプー…避難所の千点以上活用 ひとぼう
2022/10/19 17:15
人と防災未来センター主任研究員の(左から)正井佐知さん、林田怜菜さん、高原耕平さん。段ボール箱には、避難所で使われた生活用品などが入っている=神戸市中央区脇浜海岸通1、同センター
缶詰、水のいらないシャンプー、小型ヒーター。阪神・淡路大震災の避難所で使われていた物を直接手に取り、当時に思いをはせる体験型講座に「人と防災未来センター」(神戸市中央区)が取り組んでいる。名付けて「さわる、そっからかんがえる」。22日に同センターなどで始まる「第7回防災推進国民大会」(ぼうさいこくたい)でも開催する。(井川朋宏)
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講座は研究員らがグループをつくり、今年3月に始まった。1995年の震災で2千人以上の避難者を受け入れた鷹取中学校(神戸市須磨区)の保存品千点以上を譲り受けて活用。中身は缶詰やインスタント食品、水のいらないシャンプー、海藻せっけん、小さな箱形の電気ヒーターなどさまざまだ。
参加者は、それらが入った段ボール箱を自ら開けて取り出す。なぜ、これが? どんなとき使った? それぞれが気付いたことをグループ内で話し合う。
これまでに3回開き、家族連れや中学生ら約30人が参加した。「避難が長引けば、必要なものも変わってくる」「うまく活用されない救援物資はどうすべきか」など、今後の災害に生かせる意見も出たという。
研究員らは同センターについて、阪神・淡路の伝承だけでなく、他の自然災害や戦争、公害を含めた「災厄のミュージアム」としての役割も提唱する。企画した一人、高原耕平・主任研究員(39)は「人々が苦しい思いをした記憶や物語を広く考えていかなければいけない」と指摘。過去の災害にまつわる現物を立体的に見て触れることで、想像力が高まるよう工夫したという。
研究員らは、ぼうさいこくたいの準備にも携わる。正井佐知・主任研究員(36)は「神戸・阪神間は個人から団体まで草の根レベルで防災に関わる人が多い。層の厚さを再認識した」。林田怜菜・主任研究員(38)は「震災を経験していない人も、幅広い世代で当時のことを共有できる機会にしたい」と講座への参加を呼びかける。
「さわる、そっからかんがえる」は22日午後3時半から、人と防災未来センターで。無料。申し込みは「ぼうさいこくたい」公式ホームページから。「さわれる断層」として、震災を引き起こした野島断層(淡路市)の標本(約1・5メートル四方)の展示もある。同センターTEL078・262・5095
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国内最大級の防災イベント「ぼうさいこくたい」は22、23日、HAT神戸(神戸市中央区)で開かれる。県内外から延べ約320団体が参加し、セッション、ワークショップ、屋外展示など約270のプログラムがある。無料。詳細は公式ホームページで。