大学紛争で開かれず…神戸大学で52年ぶり卒業式 元学生100人集合、思い出語らう
2022/10/30 20:10
青空の下、52年前の卒業を記念して写真撮影する神戸大のOG、OBら=神戸市灘区六甲台町
大学紛争の影響で開かれなかった神戸大(神戸市灘区)の1970年春の卒業式が30日、執り行われた。元学生らはマスク姿でもすぐに互いを認識し、苦難を乗り越えた青春時代の思い出を語り合った。
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神大では68年12月、学生寮の光熱費負担を巡って紛争が起きた。一部学生らが本部事務局などを占拠し、学内にバリケードを設置して封鎖するなど、授業ができない状態が続いた。
封鎖は翌年夏に解除され、紛争も下火になったが、卒業式は開かれなかった。それぞれが事務局に学士試験の合格証書を取りに行くなどして学生生活を終えたという。
そこで、有志らが卒業50周年の全学同窓会に合わせた卒業式を企画した。2020年秋に予定していたが新型コロナウイルス禍で2年遅れ、ようやく開催にこぎ着けた。
この日は、当時九つあった学部から計100人が参列した。藤澤正人現学長は「卒業式が大変遅くなってしまいましたが、おめでとうございます」と祝福。70年経済学部卒で阪神電気鉄道社長、会長などを歴任した坂井信也さんは「力を尽くして走ってきたが、心を休められる場所は母校と仲間たちだ」とあいさつし、再会を喜んだ。
文学部卒の女性(75)は「3年生になる頃から紛争で学校に通えなくなった」と振り返った。友人同士では連絡を取り合っていたといい「卒業論文が間に合わない友達を皆で応援に行って楽しかった」と昔話に花を咲かせた。
経営学部卒の男性(75)も「学校に通えない分、先生の自宅でゼミを開いてもらうなど濃い学生生活だった。全学で集まれていい機会になった」と、当時の写真を見ながらほほえんだ。(勝浦美香)