「打倒、女王」(13)想定外の強襲 06年兵庫国体バスケ少年女子
2020/06/08 06:00
福岡戦延長、ボールを奪い合う兵庫の山中美佳(左端)、荒木恵美(10)ら
福岡の森ムチャ、中野和来の中村学園女高勢に突然、取り囲まれた。
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2回戦延長、残り1分33秒。
兵庫の沢田悠(市尼崎高)が、自陣のコーナー付近でスローインの球を受け取った瞬間だった。
「えっ、プレス」。ベンチの滝井亜里沙(園田高)は目を見張った。
「すごい圧」と沢田。苦し紛れに出すパスは、身長179センチの森の長い腕に引っ掛かった。
再びスローイン。山中美佳(神戸龍谷高)がキャッチすると同時に、また2人に寄られた。まるで迫りくる崖。
球を奪われ、すぐそばでシュートを許した。
72-72。兵庫のリードは消えた。
一歩も運べない。
兵庫監督の吉川公明がタイムアウトを求めた。
「森ムチャが前から守ってくるとは…」。想定外の強襲だった。
◇
福岡は、守備と称しながら攻めていた。
ベンチが指示したのは、森をトップに据えたオールコートのゾーンプレスだった。
穴ができれば兵庫に突破されるかもしれず、「賭けの部分はあった」と森。
ただ「リスクでもあるけどチャンス。相手は対策をしていないはず」。
40分以上戦ったところで、さらにハードな戦術をこなす体力もあった。
バスケットは「オフェンスより、ディフェンスだと思っている」。森の哲学だ。
神奈川県出身。日本人の父とフィリピン出身の母を持ち、小学4年で競技を始めた。高校では故郷を離れて心技体を磨き、2年生の時、冬の全国舞台で優勝に貢献。大会ベスト5にも選ばれた。
今やエースを張るセンターも、この日は信念に沿い「リズムをつかむまで我慢」と忍んでいた。
「シュートを決められなくても、積極的に守って失点を抑えたらチャンスは来る」
=敬称略。肩書、所属は当時=(藤村有希子)
【あらすじ】2006年秋の兵庫国体バスケットボール少年女子、選抜メンバーを組んだ地元兵庫。最大のヤマ場と捉えていた強豪・福岡との2回戦は延長に突入した。