障害者スポーツの出前教室活況 体験通じ啓発、交流

2020/11/27 15:30

車いすに乗り、陸上スラロームを体験する女子生徒=神戸市兵庫区会下山町3、神港橘高校

 来夏の東京パラリンピックに向け、兵庫県障害者スポーツ協会の出前教室が活況だ。昨年は過去最多の59カ所を訪れ、今年は新型コロナウイルスの流行で一時休止に追い込まれたが、9月に再開。パラスポーツを一緒に楽しみながら、障害者の日常に触れる機会にもなっている。(有島弘記) 関連ニュース 障害ある次男に学んだ「命ほど重いものはない」 稲川淳二さん 東大大学院卒のリケジョは日本代表 研究職との両立で東京パラ狙う 「僕のせいでいじめられたら」障害者の子育て、NHK「バリバラ」出演の玉木幸則さん語る

 「真っすぐ行けるよ」「めっちゃ、うまい」
 神戸市兵庫区の市立神港橘高校で9日、3年生の女子生徒らが「陸上スラローム」を体験した。車いすが通るには狭い幅80センチのポール間を進み、後退したまま通過する技にも挑戦。的になる玉をめがけてボールを投げて近さを競うボッチャや、つえを使うアンプティサッカーの教室もあった。
 スラロームの講師を務めた山田和彦さん(59)=同市中央区=は、かつて全国身体障害者スポーツ大会(現・全国障害者スポーツ大会)で優勝。教室では高度な技術を披露するほか、日々の暮らしで直面することも率直に伝える。
 車いす専用マークがある駐車枠に別の車が止められ、買い物を諦めたことがある。「車いすの乗り降りにはドアを目いっぱい開ける必要がある。だからスペースが広い」。生徒らは初めて気付いた顔。山田さんが「車に乗るようになれば、優しい心を持って」と語りかけると、うなずく姿があった。
 県協会による出前教室は2015年に始まり、学校や企業を訪れている。東京パラリンピック開催が近づくにつれて依頼が増え、19年度は過去最多の1万1859人に実施。訪問数は前年から18増の59カ所だった。
 今年はコロナ禍の影響を受けるが、約20カ所での実施を見込む。他府県と比較するデータはないが、日本障がい者スポーツ協会(東京)は「兵庫は熱心で試行的」と注目する。
 県協会は、体験したい競技やパラリンピアンによる講演など、申込団体の希望にできるだけ応える。同協会の増田和茂理事(68)は「今こそ障害者が社会貢献するタイミング。交流したり、一緒にプレーしたりすることが啓発につながる」と強調する。
 一過性に終わらせない工夫もしている。教室の開催地に障害者スポーツの指導員がいれば派遣し、東京パラ以降も交流が続くように関係づくりに力を入れる。増田理事は「押し付けだけでは限界がある。地域とつながってこそ」と意義を語る。
 21年度も出前教室を開催予定。兵庫県障害者スポーツ協会(県ユニバーサル推進課内)TEL078・362・3237

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