田中支える家族「納得の走りを」 五輪陸上女子1500m準決勝進出
2021/08/03 05:30
陸上一家の田中ファミリー。(左上から時計回りに)母千洋さん、父健智さん、希実、妹希空さん=2019年10月23日、加古川市西神吉町、加古川運動公園陸上競技場
東京五輪の陸上で、中長距離のホープとして注目される田中希実(豊田自動織機TC、西脇工高出身)が2日、日本勢で初めて女子1500メートル予選に挑み、日本記録を更新して準決勝進出を決めた。陸上一家として知られ、ひたむきに強さを追い求める21歳を支えてきた家族は「納得する走りを」と願い、その雄姿を見守った。
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■本音で衝突、一緒に強さ追求
コーチの父健智(かつとし)さん(50)は元実業団選手、母千洋(ちひろ)さん(51)は北海道マラソン優勝2度の実績を持つ。妹希空(のあ)さん(16)は西脇工高陸上部員。長女の希実は家族について「陸上の楽しさを分かち合ってきた仲間」と表現する。皆、本音をぶつけられる存在だ。
日本陸上界に新たな歴史を刻む活躍に、健智さんは「自分でリズムをつくりながら最後の1周に備えよう、と話していた通りのレース。衝突しながら一緒に積み上げてきたことの答え合わせができ、ほっとした」と語った。
2019年春から健智さんがコーチを務めるようになり、練習内容が濃くなるにつれ、意見のぶつけ合いは激しさを増した。希実は勉強でも工作でも思うようにいかないと気が済まない性格。納得するまで話し合うがゆえ、調子が悪い時期は家族全員が消耗する。昨年12月の日本選手権前にも思うような練習ができず、家族に苦しさをぶつけた。5000メートルで五輪切符をつかんだが「みんな疲れ果てていた」(希実)という。
800メートルから1万メートルまで中長距離を幅広くこなすマルチランナーの希実は、常識にとらわれず、驚くほど過密な日程で連戦をこなす。今年6月の日本選手権では3種目に出場し、いずれもメダルを獲得する離れ業を成し遂げた。
練習時はタイムを計るなどサポートする千洋さんは、娘の浮き沈みを受け止め「ずっと(調子が)いいわけじゃないといくら言っても聞かない。そこまで思い詰めなくてもいいのに」と心配が尽きない。日本記録保持者になったことで「私には分からない苦しさがあるのだろう」と思いやり、「苦しんだ分、わくわくしながら五輪を迎えてほしい」と祈っていた。
「一番好きな種目」と語る1500メートルで、自身の日本記録をさらに1秒75上回ってみせた。「家族の支えがないとここまで来られなかった。ぶつかりながらでもそばにいてくれるので、思い切って陸上に取り組めている」と希実。感謝の思いを、積極的な走りで表現した。(金山成美)
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