記者コラム<サイドライン>日本流のもてなしは不変

2021/08/09 19:30

閉会式終了後、ビジョンに「ARIGATO」の文字が映る中、引き揚げる各国の選手たち=8日夜、国立競技場(撮影・堀内翔)

 東京五輪取材を終え、新幹線で兵庫に帰っていた9日。強風のため車両が岐阜羽島で止まった。 関連ニュース 「いつか両手挙げ喜べるように」男子400Мリレー、絆に触れた夜更け 柔道・フランス代表の快進撃支えた 姫路の「おもてなし」 決勝は「デザート」 田中希実「価値ある」入賞 東京五輪女子1500М

 岐阜といえば、日本女子初の五輪金メダリスト、競泳の前畑秀子さんが過ごした地だ。57年前の東京五輪を取材した元本紙記者、力武敏昌さんの話を思いだした。
 当時、競泳会場で力武さんが係員と押し問答になり、通りかかったのが前畑さんだった。現役を退き役員を務めていた五輪女王は、場を収めた上、そのまま見知らぬ記者とランチし、おにぎりをくれた。相手が誰であっても、真心で向き合う姿に心を打たれたという。
 時は巡って2021年の東京。負の面がありすぎた祭典だが、日本流のもてなしは不変だった。
 ボランティアに道を尋ねると、かなりの割合で目的地まで同行してくれた。数百メートルの長い距離でも。きょろきょろしていると、笑顔で用件を聞いてくれる。一人一人が「日本の顔」と自覚しているかの振る舞いだった。
 8日夜、国立競技場。閉会式が終わり、関係者らが記念撮影していた。
 「写真、撮りましょうか?」。ボランティアの男性に声を掛けられた。シャッターを押してもらった。礼を伝えると、男性は去り際に言った。「あなたたちを楽しませるのが私の仕事ですから」(藤村有希子)
【特集ページ】東京五輪2020

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