合言葉は「アメフトを止めるな」 試合配信や教室企画 コロナ禍「親しむ機会絶やさない」
2021/12/15 17:35
観客をチーム関係者に限ったアメリカンフットボールの全国高校選手権関西地区大会。コロナ禍で模索が続く=11月、京都市の宝が池球技場
新型コロナウイルスの影響が続く中、アメリカンフットボール界で競技熱を絶やさないための取り組みが広がっている。「アメフトを止めるな」を合言葉に、元競技者のユーチューバーが高校の試合をライブ配信したり、大学が裾野を広げようと中学生向けの教室を新たに企画したり。関係者は「競技に親しむ機会を絶やさない」と奔走する。(長江優咲)
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11月に京都市で行われた全国高校選手権関西地区大会の啓明高(兵庫)-立命館宇治高(京都)戦。試合開始に合わせ、観客席の一角で動画投稿サイト「ユーチューブ」のライブ配信が始まった。実況するのは、ユーチューバーの「パーにぃ」こと平田悠さん(28)=東京都。自身もかつて啓明高、関学大で競技に打ち込み、昨年5月に仲間2人と開設したチャンネル「月曜からアメフト」は登録者数5千人を超える。
大会を運営する関西高校連盟とも連携。大会運営に携わる教諭らが楕円(だえん)球の動きに合わせてビデオカメラを操作し、平田さんはリアルタイムで寄せられる視聴者からのコメントに答えながら試合を盛り上げる。
「戦う姿を見てもらえないのはつらい。ライブ配信をしてもらえませんか」。大会開幕前、平田さんの元に滝川高(兵庫)の選手から会員制交流サイト(SNS)でメッセージが届いたことがきっかけだった。
感染対策のため、今年の兵庫県高校秋季大会は原則として無観客で開催され、全国高校選手権関西地区大会も現地で観戦できるのはチーム関係者のみ。「大人として選手の思いに応えないのは失礼」と平田さんは会社員として働く傍ら、週末に地元関西へ戻って熱戦の様子を届ける。
9月にはクラウドファンディングを実施し、目標金額の50万円を大幅に上回る150万円を集めて配信機材をそろえた。「やっぱりアメフトが好き」と平田さん。「取り組みが競技人口や観客が増えるきっかけになればうれしい」と話す。
一方、SNS上では「#アメフトを止めるな」のハッシュタグを付けた投稿が広がっており、大学界での動きも活発だ。
関西学生連盟は今季、リーグの試合や選手のインタビュー動画、各大学の新入部員の勧誘動画などを積極的に配信する。競技に親しむ機会をつくろうと来春、中学生を対象に「フラッグフットボール」教室も大阪府吹田市で開く予定。同連盟の山田恒治専務理事(63)は「コロナ禍でも学生が競技を続けられる体制を整え、支えていきたい」と意気込んでいる。
■07年ピークに競技人口減少県内
高校、大学アメリカンフットボールの競技人口は減少傾向にある。
兵庫県高校体育連盟アメリカンフットボール部によると、部活動に所属して競技する県内の生徒数は2007年をピークに減少。関西学生連盟の統計でも下部の3、4部リーグ所属校を中心に選手数が伸び悩む。07年の県高校秋季大会には10校の計414人が参加したが、今年は10校、計289人にとどまる。
アメフトは最低でも11人の選手が必要だが、市西宮高(西宮市)は今季、部員が昨季の13人から6人へと半数以下に減った。そのため、今秋の県大会は、三田祥雲館高(三田市)との合同チームで臨んだ。
競技人口ピークの07年は高校アメフト部を舞台にした漫画「アイシールド21」が人気を集め、テレビアニメ化された時期だった。新型コロナウイルス感染拡大防止のため、満足に新入部員の勧誘ができていないことも苦境に拍車を掛ける。
市西宮高の飾森宏監督(65)は「アメフトは、見て体験してこそ面白さが分かるスポーツ。かっこいい、やってみたいと感じてもらう機会を増やせれば」と話す。(長江優咲)