「もう一つのサッカーW杯」に挑む神戸の18歳、原点は「先生との鬼ごっこ」 初の代表公式戦「目標は世界一」

2022/03/08 20:21

サッカー日本代表として知的障害者の世界選手権に挑む神戸特別支援学校高等部の大野航。運動量が自慢だ=神戸市北区の同校

 サッカーの「もう一つのワールドカップ(W杯)」と呼ばれる国際大会、知的障害者による世界選手権に、神戸特別支援学校高等部3年のDF大野航が日本代表として出場する。第8回となる今大会は6月にフランスで開幕。初めての海外渡航、代表公式戦デビューが大舞台となる18歳は「楽しみ。チームの目標は初の世界一」と意気込む。 関連ニュース イニエスタ深まる日本愛「神戸に来て正解だった」 きっかけは「キャプテン翼」 「サッカー好きだけど忘れる時間も必要だった」 バセドー病と闘う元なでしこ、復活への歩み 「ゴール狙う目が、演技に生きた」 サッカー元日本代表ストライカーが俳優デビュー

 神戸市北区出身で、小学校3年生の時に競技を始めた。兄2人は野球をしていたが、守備の時間など、じっとしているのが苦手だったため、常に動き回るサッカーを父に勧められ、地元のクラブに入った。
 だが、短気な性格もあって「試合に負けそうになると、1人でどっかに消えた」という。支援学校中学部のサッカー部に入った後も「やる気をなくしたらコートに寝転んだ」と、なかなか高い技術を生かせないでいた。
 変化が起きたのは中学部3年生の時。「代表になりたいのに、これでええんか?」。当時の監督に言われ、試合中の精神面のコントロールや、不得意だった仲間との意思疎通を意識するようになると、内面が成長した。
 高等部から指導する松本和也顧問は「自分からコミュニケーションを取り、学年全体を引っ張るリーダー的存在になった」と認める。生徒会の役員やチームの主将を務める一方、ボランチからサイドバックに転向した高等部2年生から、日本代表に呼ばれるようになった。
 サイドバックは運動量が求められる。「先生との鬼ごっこが生きたのかな」と大野。中学部までは授業中もじっとできず、校庭を走り回った。自然と持久力がつき、今は平日の自主練習として両足首に1キロずつ重りをつけ、約50メートルの階段を最低10本は走破。体幹トレーニングでは、長く健常者の日本代表サイドバックとして活躍する長友佑都(FC東京)らの動画を参考にする。
 週末は健常者の社会人チームに交じり、1対1も磨く。「代表ではオーバーラップの回数が多いことをすごく褒められる。攻守に貢献するのが自分」と頼もしい。
 世界選手権は6月23日に始まり、日本は6大会連続6度目の出場。前回は6位で、大野はチームをさらなる高みに導くため、強化合宿でレギュラー奪取をアピールしていく。(有島弘記)

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