独立目指すかばん職人「後押しする場に」豊岡に創作拠点が開業 販売、製作、交流スペース備える 豊岡
2022/06/28 05:30
2階の月額会員制のアトリエ。ミシンや作業台を使用して創作に励むことができる=豊岡市中央町
兵庫県豊岡市中央町のカバンストリート(宵田商店街)に、独立を目指すかばん職人らの創作拠点がオープンした。月額会員制のアトリエを備え、会員の商品を取り扱うショップを併設した。オリジナルブランドのかばん店「メゾン・デフ」を運営する下村浩平さん(35)が立ち上げた拠点で、「独立に向けて背中を押せる場にしたい」と話している。(石川 翠)
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新たな拠点は「アパートメント」で、下村さんが3階建ての既存物件を改装した。アトリエは2階にあり、会員が共用するミシンなど18台の機械が置かれる。現在、かばんや財布、杞柳(きりゅう)細工、竹細工など専門の異なる十数人の会員が在籍し、互いに刺激を受けながら日々製作に励む。
個人が資材の仕入れ先などを一から開拓するのは大きな労力がいるが、新拠点の趣旨に賛同する関連業者の製造や加工のネットワークを活用できるメリットもある。
会員はアトリエで製作した商品を、1階のショップで販売することができる。収益化とともに「買い手との交流も生まれる」と期待する。ショップはギャラリーのような雰囲気で、壁に設けられた棚には、かつてかばん製造に使われた金型が受け具になっていたり、窓側にはミシンが置かれ、作業の様子を外から見ることができたりする。
3階には、服飾や建築などの書物が並ぶ図書コーナーとセミナースペースがあり、創作のヒントを得られるようにした。
下村さんは2017年にかばんのブランドを立ち上げ、20年にカバンストリートに実店舗を構えた。一大産地で、資材の卸業者など関連会社が集積し、さらに商品を買い求める一般消費者も一定程度いる好環境が豊岡の強みと感じていた。一方で、個人が起業する意欲があってもサポートは乏しく、後押しできる拠点を整備したいと考えていたという。
下村さんは、高級腕時計のまちとして有名なスイス西部のジュラ地方を引き合いに、「100年後の未来にまちの産業を支えるようなブランドが育っていってほしい」といい、「豊岡の地で自らが享受できたことを次の誰かに渡したい」と話している。
月額料金は1万8千円。アパートメントTEL070・8965・9110