砂浜削られ2メートル超の「浜崖」延々と…増えた高波、対策に頭を悩ませる浜坂の人気ビーチ

2022/07/17 05:30

高潮や高波で浜辺の砂がさらわれ、「浜崖」と呼ばれる現象が発生した浜坂県民サンビーチ=新温泉町芦屋(但馬水産事務所提供)

 雄大な日本海を臨む新温泉町芦屋の浜坂県民サンビーチで、遊歩道の安全確保や景観保全のための工事が進んでいる。台風や冬の寒波の影響などで浜辺の砂が削られ、「浜崖」と呼ばれる高さ約2メートル超の段差が、幅数百メートルにわたって確認されたからだ。同ビーチを管轄する県但馬水産事務所(香美町香住区境)が崖面に砂を補充する工事を実施。しかし、遊歩道の一部は今も通行規制が続いているほか、今後も同様のトラブルが見込まれることから、浸食を防ぐ堤防の改築などが計画されている。(末吉佳希) 関連ニュース 【写真】工事前の調査風景 【写真】慶野松原海岸で大規模浸食 最大1・5メートルの段差 アウトドアブームの裏側で…渓谷の自然汚さないで ごみ相次ぎ、車の規制を強化

■台風や高潮で
 浜坂県民サンビーチは、西側の浜坂漁港から東側の岸田川河口までの全長約570メートルの砂浜。山陰海岸ジオパークに含まれ、白い砂浜と青々とした松林の続く海岸線は「日本の白砂青松百選」に選ばれた。キャンプ場としての利用も多い人気のレジャースポットで知られる。
 同事務所によると、浜崖は、河口近辺から中央部にかける約300メートルで発生。昨夏の台風がもたらした高潮や、昨冬の寒波による高波などで例年より多くの砂が削り取られたとみている。着工前の現地調査では、崖上から陸側の県道沿いに流木や海洋ごみが流れ着いた形跡が見つかったという。
 また、ビーチに延びる遊歩道の基礎部分がむき出しになった箇所も確認された。同事務所漁港課の山本良太郎課長は「陸からの地下水や海水の流れ込みが、コンクリートの基礎よりも下の砂を海に流出させる可能性が高い」と説明する。2001年に明石市の大蔵海岸で、人工砂浜が陥没して女児が命を落としたケースに似た事故を招く恐れもあるという。
■「異変」は隣県・鳥取でも
 砂浜の「異変」は、隣接する鳥取県でも起きている。同県土整備事務所(鳥取市)によると、管轄する県東部の浦富海岸(同県岩美町)など4地帯で浜崖を確認。新温泉町と同様に台風や異常な高波などが要因とされ、崖の高さは最大で6メートルを超える箇所もあったという。
 新温泉町では、夏本番を前に急ピッチで対応が進められた。今月8日には同ビーチで「海開き」があったほか、17日には花火大会なども予定されている。利用が増えるのを前に、県但馬水産事務所は先月上旬から浜崖の埋め立て工事に着手した。河口付近の砂州に堆積した砂を補修用に充てる形で、約1カ月間でなだらかな斜面を再現した。
■複合的な要因
 しかし、近年は全国的に波が高くなっており、浜崖の現象が再び起きる可能性も高いことから、今回の工事は応急的な処置にとどめており、同事務所はビーチの抜本的な改築を検討している。具体的な対応策として、ビーチから100メートル以上離れた沿岸に設置している消波用の「離岸堤」のかさ上げや拡幅工事、撤去も視野に入れた遊歩道の見直しなどを挙げる。
 山本課長は「波の高さや季節風など複合的な要因が絡むため、慎重な対応を進めたい」としている。

神戸新聞NEXTへ
神戸新聞NEXTへ