但馬唯一の映画館「豊劇」30日営業終了 後継団体が引き継ぎ「新しい豊劇に刷新」

2022/08/30 05:30

後継の田中亜衣子代表=豊岡劇場

 兵庫県の但馬地域で唯一の映画館「豊岡劇場」(豊劇、豊岡市元町)が30日、通常営業を終える。一般社団法人「豊岡コミュニティシネマ」が事業を引き継ぎ、来春までの再開を目指す。同法人の田中亜衣子代表(35)は「悲しい休館ではない。ファンが待ってくれている間に新しい豊劇に刷新して、再スタートする」と前を向く。 関連ニュース 是枝監督も「一番の課題」 映画業界埋まらぬ男女格差 実態把握に向けCF 豊岡の映像作家ら 松本人志さんも思い出語る「塚口さんさんタウン」とは 「播州弁でしゃべって」 会場からのリクエストにのんが応じたひと言

 後継の一般社団法人、豊岡コミュニティシネマを近く設立する。現在、豊劇を運営する不動産会社の石橋設計(同市日高町水上)が同法人に業務を委ね、土地と建物を同社が所有する。再開のめどは今年12月から来年3月末の予定という。
 同劇場は1927(昭和2)年に開業し、2012年にいったん閉じた。14年に石橋設計が中心となって復活。19年度に再開後で最大の約1万8千人を集めたが、新型コロナウイルス禍やインターネットの動画配信などの影響で、20年度は約8500人にまで半減した。今年3月に休館を発表し、田中代表が5月に事業承継を表明していた。
 大ホール(154席)と小ホール(34席)で上映してきたが、来観者が多い時でも小ホールが埋まる程度だった。赤字が続く中で事業を引き継ぐが、田中代表は「事業を大きくせず、まちの小さな喫茶店のように、小さくとも長く続けていきたい」と語る。
 再開後は、いずれかのホールで映画の常時上映を視野に入れつつ、もう一方で地域内外の人が交流できる貸し館などを模索しており、「映画館としての新しい価値を創造していく」としている。
 9月1日以降の休館中も貸し館として稼働させる方針。イベントや上映会、パネル展などを想定しており、個人・団体を問わず、利用者を募集する。
 30日は午後5時に最後の上映を終える。(丸山桃奈)

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