大手百貨店バイヤーが注目、全国で展示会 実家1階がアトリエの人気ブランド
2022/04/03 05:30
セミオーダーブランドを運営する籠谷裕美さん(右)と長女美桜さん。持っている服の生地は、いずれも美桜さんがデザインしたものだ=高砂市
兵庫県高砂市の籠谷裕美さん(54)、美桜さん(25)母娘によるファッションブランド「seed one style(シード・ワン・スタイル)」が、東京や大阪の百貨店で展示会を開くなど、人気を博している。地元兵庫県産コットンなど地方の素材にこだわり、鮮やかな色彩の柄でデザイン。セミオーダーでその人に合った一着を作り、「大量生産・消費でないファッション」を目指す。(増井哲夫)
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服などのハンドメード作家を集めたイベントをしていた裕美さん。2001年、参加者の一人から演奏グループの衣装製作の相談を受けた。裕美さんがデザインなどを一緒に考え、それを基に縫製やパターン(型)の担当に発注。体形もばらばらの9人に合わせた、ブラウスとドレスを仕上げた。その後も友人相手にオーダーで洋服を作ったところ評判となり、ついにはウエディングドレスまで製作することに。
しかし、手間暇が掛かる割に友人相手ではあまり収入が得られない。縫製スタッフが心身共に疲れてしまい、2年後にいったん中断した。その後03年にネットショップを立ち上げ、できた分だけを売る方式に変更。新作はネットに上げると10分で完売するほどの人気となったが、固定客中心で、買えなかった人からはセミオーダーを望む声が届いた。
こうした声を受け、12年に母の介護で実家をリフォームするのを機に1階に自社アトリエを開き、セミオーダーのブランドを立ち上げた。「原点に立ち返った」と裕美さんは話す。
コンセプトは「着ていると幸せを感じられる服」。それぞれデザインは裕美さん、縫製は大手アパレル出身者ら3人、パターンは服飾専門学校の元講師が主に担う。17年からは、元々美術に親しんでいた美桜さんが参加してプリント生地のイラストを描き、これまでに約30種類を手掛けた。
各地の展示会で注文を受け、柄のパターンを選んでもらってサイズや生地を決めてオーダーシートを作成。裁断から縫い上がりまで同じ縫製士が担当するため、完成までには約2~3カ月かかる。
生地は、オリジナルプリントや刺しゅう布などを用意する。兵庫県西脇市のコットンや岡山県井原市のデニムなどを仕入れ、刺しゅうは西脇の工場で製作してもらう。「アパレル産業の存続に少しでも貢献したい」との思いからだ。
13年には大手百貨店「伊勢丹」のバイヤーの目に留まり、新宿店で展示会を行うことになった。裕美さんは「最初に連絡を頂いた時は詐欺と勘違いした」と笑うが、今では同店のほか、大阪・阪急うめだ本店、大丸福岡天神店などでも月1、2回開いている。
裕美さんは「大量廃棄や海外生産といった、アパレルの負の側面が指摘される中、大量生産で安く作るのではない服が必要だと思った。その人に合った一着と出合ってほしい」と話す。