ゴーヤーの苗を植えたはずが、つるをたどると…カボチャ!? 背景にウリ科特有の事情が

2022/09/13 20:10

ゴーヤーの苗を植えたはずなのに、なぜか実ったカボチャ=高砂市米田町

 「ゴーヤーの苗を植えたのに、根元からカボチャのつるが伸びてきた」。神戸新聞東播支社に8月下旬、シルバー人材センター職員の足田幸重さん(70)=兵庫県高砂市米田町=からそんな情報提供があった。同じウリ科だが、そんなことってあり得るの? 足田さんの畑へ向かった。(千葉翔大) 関連ニュース 「幻のヘビ」のはずが…全国で相次ぐ目撃情報 専門家「そう呼んだことは一度もない」 自宅の庭で世紀の発見? スマホで撮影、検索結果はツチノコ! 研究員の回答は… なぜ?消えつつある「父兄」 時代とともに「父母」→「保護者」へ 悪意なくとも言葉の配慮


 足田さんの自宅から南東に約300メートル。住宅街の入り組んだ路地を進むと、加古川右岸ののり面の下に約30平方メートルの畑が見えた。奄美群島・徳之島出身の足田さんが約20年前、好物のゴーヤー(ニガウリ)などを育てようと開いた畑だ。
 足田さんは4月中旬、ゴーヤーの苗を4株植えたという。土からは薄緑色のつるが見えた。先にはゴーヤーが実っている。植え付け以来、つるは順調に成長していたが、6月上旬にある異変に気付いた。
 「ここや、ここ」。足田さんが指す所から、他とは明らかに違う、濃い緑色のつるが枝分かれして伸びていた。その先には直径約15センチの実がなっていた。本来のカボチャより縦に長く、皮の凹凸が気になったが、確かにカボチャの実に見える。
 カボチャに似たゴーヤーではないか-。記者の問いに、足田さんは「中身は見ていない」。その実の一部を切ると、黄色の果肉が見えた。足田さんは「正真正銘のカボチャや」と声を弾ませた。
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 実を分けてもらい、飲食店店主の知人男性(38)に、カボチャの塩焼きを作ってもらった。6枚にスライスされたカボチャの皮は固く、特有の甘みは感じられない。口の中でほろりと崩れる果肉とその色から察するに、カボチャであることは間違いないのだが…。
 では、なぜこのような現象が起きたのか。背景には、ウリ科特有の事情が関係しているようだ。
 ウリ科の作物にはキュウリやズッキーニ、スイカやメロンなどがある。手柄山温室植物園(兵庫県姫路市)によると、ウリ科の作物は一般的に害虫や病気に弱いらしい。一方で、カボチャはウリ科の中で虫や病気に強いとされ、接ぎ木の根っこ部分になる「台木」に使われることが多いという。確かに、足田さんも「接ぎ木の苗が関係しているのかも」と話していた。
 ゴーヤーの台木に用いられ、そこから生えてきたカボチャの脇芽は本来切られるべきものだが、今回はそれが残っていた可能性がある。調べると、県内では他でキュウリの枝にカボチャが実った例もあった。
 取材結果を伝えると、足田さんは「そのうち食べてみようかな」と苦笑い。ちなみに、収穫から2週間ほど果実を寝かせると、甘みがぐっと増すのだとか。皆さんもカボチャを収穫した際は、ぜひ試してみてください。

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