ニャーーーン! エンタメ小説界の異才・早見和真さんと絵本作家かのうかりんさんのコンビによる創作童話「かなしきデブ猫ちゃん」の兵庫編が16日、いよいよスタートする。クールで気高きオス猫「マル」の冒険物語は、2018年に愛媛新聞で連載が始まり、昨年12月にはNHKでアニメ化されるほどの大人気に。兵庫五国(摂津、播磨、但馬、丹波、淡路)を巡る新たな旅を前に、ここまでのダイジェストをお届けしよう。
■マドンナ探して恋と冒険(第1シリーズ:2018年4月~11月)
愛媛の捨て猫カフェで内気な少女アンナと出会い、引き取られたマル。幸せに暮らしていたある日、後輩猫の悪さを懲らしめていると、アンナが冷たく言った。「コラ、デブ猫!」
そこへ額に傷のある黒猫が現れ、マルに告げる。「気高き者よ。広い世界を見るのです」
声に導かれて家を出たマルは、道後の温泉街へ。そこで坊っちゃんや赤シャツ、山嵐と出会い、傷ついた黒猫がみんなのアイドル
「マドンナ」だと知って、彼女を探すために旅立つ。
自転車の前かごに乗ってしまなみ海道を疾走し、石鎚山ふもとの田園風景にうっとり。伊方原発や西日本豪雨の被災地も見た。そして宇和島でマドンナを見つけて恋に落ち、夜桜を眺めながら告白。ぶじ仲間のもとへ送り届けた。
恋と冒険を経て、ぐんと成長したマル。家に帰ると、アンナが力いっぱい抱き締めてくれたのだった。
■「秘密の泉」を求め、再び旅へ(第2シリーズ:2019年9月~2020年6月)
最初の冒険から1年。穏やかな日々を送っていたマルだったが、アンナやマドンナが次々と謎の病に倒れてしまう。いったい何が!? 猫仲間から「万病を治す秘密の泉」のウワサを聞き、再び旅に出ることに。
答えは赤い灯台にある-。言い伝えを頼りに、大洲市から銀河鉄道に乗ったり、鬼北町で鬼退治に向かったり、河原津海岸で助けたカブトガニに連れられて竜宮城へ行ったり。旅の途中、同じく秘密の泉を探すメス猫リカと出会い、「灯台もと暗し」と教えられる。
仲間の住む街へ戻ったマルが目指したのは、道後温泉本館のてっぺんにある赤い振鷺閣。その太鼓を打つと、あたりがぐるぐる回りだした。やがて洞窟のような場所に着き、ちろちろと水のしたたる音が…。
水を持ち帰ったマルを待っていたのは、なぜか元気いっぱいのアンナ。病気は治せなかったけれど、旅の体験はマルの宝物になった。
■ダンス修行を経て、新たな夢が(第2シリーズ:2019年9月~2020年6月)
「秘密の泉」を探す旅から3カ月後、アンナの習い事の発表会が「坊っちゃん劇場」で開かれた。マドンナと一緒に見に行ったマルは、華麗なミュージカルの舞台に感激。「オレも踊りたい!」。次なる旅の目的はダンス修業に決まった。
前回の旅で出会ったリカに踊りの師匠ミヤギを紹介され、基本から仕込まれるマル。八幡浜市の「もっきんロード」でリズム感を養い、大洲市の長浜大橋で体幹を強化。内子町では大凧に乗って精神力を鍛え、久万高原町ではクマと踊って楽しむコツをつかんだ。
そして迎えた「ネコフェス」のダンスコンテスト。マルは名曲「瀬戸の花嫁」に合わせ、頭を床につけて回転する大技ヘッドスピンを披露。拍手喝采を浴びた。
新たな自分に生まれ変わり、マルにはまた夢が芽生えた。道後の夕日を背に受けて、クールにマドンナに告げる。「まずは神戸という街から世界を目指す」